「北海道ナンバーワンの生活インフラグループになる」をビジョンに掲げてサツドラホールディングス(HD、本社・札幌市北区)とコープさっぽろ(本部・同市西区)が20日、包括業務提携契約を締結した。具体的には商流・物流を統合して間接コストを軽減、商品開発や決済・ポイントサービスなどにも共同で取り組む。今後縮小する北海道経済の中で持続可能な流通小売り業のモデルを模索する。生活協同組合と株式上場企業がこうした業務提携を結ぶのは珍しい。(写真は、包括業務提携契約を締結したサツドラHDの富山浩樹社長=左とコープさっぽろの大見英明理事長)

 サツドラHDは8年前にコープさっぽろの大見英明理事長の紹介で、共同仕入れ会社のニチリウ(大阪市福島区)グループに加盟するなど交流があった。大見理事長とサツドラHDの富山浩樹社長は定期的に情報交換してきたが、人口減少、少子高齢化が急速に進む道内での事業継続に危機感を共有、富山社長が業務提携を大見理事長に打診して今回の締結に至った。

 8月3日に両者は業務提携に向けた協議を開始すると発表、4ヵ月かけて具体的な取り組みを検討してきた。当初はもう少し早く提携締結が実現するとみられていたが、大見理事長は「生協と上場会社との提携のため非常に難しい内容だったが、北海道にどう貢献できるかという立場で4ヵ月検討してきた。商流・物流を含めて相互に補完して事業展開を進められる見通しが立ったので提携締結に至った」と話した。

 富山社長は、「コープさっぽろは107店舗、サツドラは218店舗を展開しており、コープは生鮮・惣菜中心で客層は高齢者が多い。サツドラはドラッグ・調剤中心で20~50代の女性が多い。客層でお互いの強みを補完し合える」と話した上で、「北海道は社会課題の先進地域であり、両者の強みを生かしてチャンスに変えたい。両者合わせた流通小売り総額は3200億円を超えるため、北海道ナンバーワンの生活インフラグループになることをビジョンに掲げた」と述べた。

 業務提携を実のあるものにするため、両者の役員級3人ずつで構成する「北海道MD機構」を設置、まず2021年をめどに商流と物流を統合する。商流については食品系をコープさっぽろに、非食品系をサツドラHD子会社のサッポロドラッグストアーに一本化する。また、物流についてはコープさっぽろの関連会社、北海道ロジサービス(江別市)が担う。このため、サツドラHDは北海道ロジサービスに10%の出資を行う。

 大見理事長は、「食品卸は21年までに双方協議の上で組み換えする。卸の再編はあるが、特定の卸に不利益にならないよう配慮して引き続き協議したい」と話した。富山社長は、「それぞれ卸が違うので(卸の)皆さんにメリットが出る形で実行したい。卸もこうした提携は初めてなのでどうしたらいいかわからないところもあるのでないか。きっちりと説明しながら進めたい」と述べた。サッポロドラッグストアーの物流倉庫として、加藤産業(本社・西宮市、東京本部・東京都大田区)が建設した「輪厚流通センター」は継続して使用する。

 その他にもコープさっぽろのPB(プライベートブランド)商品やサッポロドラッグストアーのPB商品を相互の店舗に供給することや共同でPB商品の開発も手掛ける。両者のポイントカードや電子マネーの共同化なども検討していく。

 今回の包括業務提携は、業界の垣根を超えた提携だが、当面消費者へのメリットは限定的。まずは商流統合による規模を生かした仕入れ力拡大と物流一本化でコストを低減、営業利益(剰余)の最大化を図ることが第一段階になりそう。低価格競争が続く流通小売りの現場ではいかに粗利益を確保するかが生き残りの鍵。そういう意味でも両者の提携は具体性のあるものになりそうだ。



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