社団法人北海道中小企業診断士会の実践的企業再生研究会は17日、金融関係者などを対象に「事業デューデリジェンス(再生企業の事業精査)」の実務セミナーを札幌市内で開催、長崎屋の管財人代理を務めた岸本昌吾・中小企業再生支援全国本部プロジェクトマネジャーが食品スーパーのデューデリジエンスの基礎について講演した。岸本氏は「生鮮4品にスーパーの実力が出る」、「ロスと売価変更をいかに効率的に管理するか」など食品スーパーの再生に必要な項目を詳細に解説した。(写真は、講演する岸本昌吾氏)
 
 岸本氏は、日債銀などを経て長崎屋の再生に関わった経験から、現在でも年間400店の食品スーパーを回り経営改善のアドバイスなどを行っている。
 
 事業デューデリジェンスの経験も豊富で、「現場感覚のない事業デューデリジェンスでは再生計画は立てられない」として、再生支援を行う金融関係者らに現場感覚を磨くコツを伝授。
 
 白菜やきゅうり、しょうがなどの商品鮮度を見分けるポイントや青果・鮮魚・精肉・惣菜の生鮮4品が売上げの50%を切っているスーパーは生鮮の信用がないこと、55~60%あれば元気なスーパーであることを指摘。
 
 そのうえで基本商圏を1kmとして全国平均の年間1世帯当たりの食料品支出額が60万円に想定、シェア10%ならかつかつで生きており、20%なら頑張って継続していける、30%はガリバー独占という目安も示した。
 
 岸本氏は数多くの食品スーパー事業デューデリジェンスを手がけた経験から、6~7割は経営者など内部要因が不振の原因だとし、経営者の考えが変わらなければ金融支援の手術だけでは生き残っていくことができないと述べた。
 
 勝負は生鮮4品で、例えばトマトのSKU(在庫保管単位)は最低限5つ用意されているか、鮮魚ならサケの切り身が70~80gのものが98~100円で売られているかなど品揃えを見るポイントを訴えた。
 
 食品スーパー再生の根本要因について、岸本氏は「ロスと売価変更をどうやって効率的に管理し粗利を確保できるかにかかっている。事業デューデリジェンスでは、この部分がどの程度改善余地があるのかを見極めることが鍵になる」と語った。
 
 また、事業デューデリジェンスを行って経営改善計画を策定する前にやってはいけないこととして岸本氏は①信用もないのに店の高級化をすること(四国の食品スーパーのケース)②赤字店舗の閉店先延ばし(関東)③ダラダラした小出しのリストラ(中部)④中小なのに大手と同じ商売をする(関東)⑤店回りをしない経営者――の5点を挙げた。


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