新生アークスがきょう始動、「ヤマザワ」「静鉄ストア」「ユーコープ」と外部移入役員が中枢のユニバースとどう融合するか

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 アークスは21日に北東北を地盤にする食品スーパーで青森県唯一の東証1部上場企業、ユニバースと経営統合し新生アークスとして本州進出するが、これまでのアークス傘下企業とユニバースとの間には社風や取締役の布陣に大きな違いがある。「走りながら考え、修正していく」というアークスの社風と「じっくり考えてから一直線に進んでいく」ユニバースとの統合は、横山清アークス社長が言う“創発現象”をどう発揮するのか注目される。(写真は、札幌市中央区のアークス本社)
 
 ラルズを中核とするアークスグループは、ラルズの伝統ともいうべき社風が色濃く残っている。「とにかく攻撃的で、売って売って売りまくるというのがラルズ。どんな敵が出てこようと戦闘意欲は衰えないし、勝つまで戦うという姿勢が店舗の現場に浸透している」と言うのは、アークスグループ企業の幹部だ。
 
 競合店の徹底分析によって価格や品揃え、商品レイアウト、時間ごとの価格設定を細かくチェック。商品の絞り込みと鮮度アップ、低価格を訴求する個店強化による競合対策は、水源地オペレーションとして、ラルズのDNAとなり今やアークスのDNAとして引き継がれている。
 
 現在のラルズの役員陣には、当時の水源地オペレーションを構築していった向こう見ずのつわものたちが中心になっている。
 
 ユニバースは、「東北の暴れん坊」(シジシー関係者)と異名があるように、一代で1000億円企業を築いた三浦紘一社長の個性が強い。店舗の広さと生鮮食品の強みは、青森県でシェア19%を確保するまでに成長してきた。
 
 ユニバースの役員陣には外部からの移入組が中核を占めている。高橋清俊常務(63)は、山形・宮城の食品スーパーで東証1部のヤマザワ社長から2007年にユニバース入りしている。取締役商品部長の重田博氏(62)は、静鉄ストア副社長を経て06年に入社、その後退任して10年に再入社した経歴を持つ。取締役開発部長の澤田雅廣氏(62)は、みちのく銀行開発室室長から05年にユニバースに出向しその後転籍、06年に取締役に就任。
 
 取締役営業支援部長の竹永徹雄氏(64)は、生活協同組合ユーコープ事業連合の商品本部長や理事を務め、05年に入社して取締役に就いた。取締役情報システム部長の井上浩一氏(55)は、ソニーから05年にユニバースに転じ、10年に取締役就任。
 
 プロパー出身役員は、取締役店舗運営部長の長崎善人氏(51)、同総務部長の田名部淳雄氏(55)、同営業企画部長の三浦建彦氏(40)の3人。建彦氏は三浦社長の子息だ。
 
 三浦社長以外の経営陣は外部移入が5人、プロパーが3人という布陣。外部移入組はいずれも05年以降に入社しており、アークスの中核になっているラルズが社歴40年以上のプロパー役員陣が多くを占めているのとは対照的だ。
 
 アークスの横山清社長は、今年の年頭の言葉は、『熾(おこ)せ創発の力 集中化差別化 低コストの追求で新時代の旗手となる』――というものだ。
「創発という言葉は、複雑系の用語。ノーベル賞を受賞したベルギーの化学者が創発現象で化学を解いたが、社会学的にもそういう現象がある。人間一人ひとり はおとなしくても、ある瞬間に大きな力を引き起こす。例えは悪いが、戦争にしても革命にしても“創発”の力が作用している。人間集団でああだ、こうだと動 いているうちにパッと変わっていくことを“創発”と見てもいいのではないか」と昨年末、横山社長は語っていた。
 
 これまでのアークスにとってユニバースは異色であり、経営統合によってどんな創発現象が起きてくるのか。「情」の横山社長と「理」の三浦社長の「融合」が、新生アークスにどう投影していくかが注目される。

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