アークス横山清社長インタビュー②「我々は羽化のステージに入った」

流通

 2018年の年頭インタビューは今年もアークス(本社・札幌市中央区)の横山清社長(82)が登場する。元日に続く2回目は、デフレが始まった20数年前から既に流通業界で始まった変化の兆しとスーパー生き残りの胆について言及してもらった。流通業界50数年、横山社長の“大局観”で時代を斬ってもらおう。IMG_9918(写真は、横山社長)

「金融機関は、金融ビッグバンで受けた痛手を20数年間で何とか取り戻してきましたが、ここにきてマイナス金利によって利益を上げる根源が失われつつある。地銀が中心になってM&Aが多発していますが、おそらく2018年は地銀合併に伴って別の業界再編成も起きてくると思います。
 道内2行の合併だって全くないとは言えない状況です。独占禁止法によって『絶対にない』と言われていますが、20数年前にも『絶対ない』と言われていた都銀破綻があったのですから。地銀は、第2地銀も含めると全国で105行ありますが、私はおそらく半分になると思います」

「流通業は、銀行再編によっていずれ資金的問題が出でくるとともに事業承継の問題も一層深刻化するでしょう。スーパーなど食品小売業では今も創業者、初代の人が多い。しかしスーパーの揺籃期(ようらんき)から50数年経って、良いも悪いも含めてちょうど今、設備も老朽化していて再編成をしなければならない時期。先ほどのレジの話ではないですが、リースが切れた後の安いコストでその分だけ利益になると言われた時代から、次から次に新しいものが出てきて、乗り換えていかざるを得ない時代に入っています。そういうことも大きな金融的なエポックですね」

「人も会社の組織も施設も、それに加えて金融の在り方もフレキシビリテイがない時代に入りました。恐るべきことはいつ起こるかわかりません。その予兆が始まる元年が。2018年ではないでしょうか。
 20世紀に入って世紀が変わってもそれほど大きな変化はないと言われましたが、現実には2003~4年から変わり始めました。2008年にはリーマンショックが起きました。デフレは20数年前から始まっていますが、その間に流通業は大幅に裏側の変化があったと思います」

「ダイエーや西友は、今もストアネームとしては残っていますが、この20年でイオンでありウォルマートの子会社になりました。そのイオンや西友が、『道民のための店』と言っています。北海道にいる我々が頑張らないと、結局、名は残っているけど体は全くほかのものになっているということになってしまう」

「30年前の道内スーパーランキングを見ると、何かアクションを起こしてきた会社は今も残っています。『このままでやっていける』と言っていた会社の多くは消えてしまいました。30年前から皆が気付かない変化が始まり、20年前からのデフレでさらに変化が加速したと言えると思います」

「アークス各社のシステム統合は、ソフトづくりで悪戦苦闘しています。運用が始まっても1~2年は大変だし5年後には新しいシステムが出てくるかもしれません。そのときはまた思い切ったことをやらなければいけない。様々なデータを集めて分析するデータマイニングは我々の想像を絶するくらい先に進んでいます。それを追いかけながら、別のものが出てきたら対応していきます。そういう世界にいるのと、全く関わっていないのとでは対処の方法が変わってきます」

「イオンが打倒アークスのような宣言をしていますが、我々はそれに対して『イオン、何するものぞ』とは言いません。イオンに『勝つ』のではなく『贏(か)つ』で対応します。どんな新しい流通戦に入っても増やす、儲ける、まさる、結果的に贏(か)つということです」

「2018年の北海道流通業界で我々はこうするという決め手はありませんが、大切なのは収益力とともに持久力、新しいニーズへの対応力ができているかどうか。保守的なようだけど我々はこれを今まで地道に構築してきました。アークスは今、言うなれば“ヤゴ”が“トンボ”になるような、羽化をしている状況と言っても良いでしょう」
(以下、続く)

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