アークス横山清社長が2017年を展望する②「10年レンジで見ると北海道でも行き詰まるところがある」

流通

 年頭を飾るリアルエコノミーインタビューは、元日に続いてアークス(本社・札幌市中央区)の横山清社長(81)が登場する。今回は、現下の経済情勢を分析するとともに北海道の流通業界を俯瞰、見えてくる問題を剔出(てきしゅつ=えぐり出すこと)する。IMG_1062(写真は、インタビューに答える横山清社長)

「大手流通は、最近になって『地方は地方に任せよう』というマーチャンダイジング(MD)を唱えているが、裏を返せば『業績が悪いから地方は地方に任せる、しっかりやってくれ』と言っているようなもの。それで果たして士気は上がるだろうか。
 例えば仕入れにしても、大手でもその部門を個別に担当させるような人材は少ない。私たちだって地域で半世紀以上、スーパー経営をしていても1つの仕入れルートを作ることも大変なんですよ。結果、卸やメーカーに『何か売れるものをもってきて』という程度のものでしょう。自分で市場に行って仕入れを全部経験している人なんてなかなかいない。大手が地域密着をしようと言っても、我々は地域密着しか選択肢がない中でずっと経営してきたんだ」
 
「世の中のトレンドは、4サイクルエンジンと同じ。吸入、圧縮、燃焼、排気。バブルが弾けて燃焼、排気、今は吸入の段階と言えるかも知れない。しかしそこではっきりと世の中が変わり始めた。IoT(インターネット・オブ・シングス)やAI(人工知能)などはどんどん進化している。アマゾンが出てきて流通が変わると言われているが、セルフサービスが導入されてスーパーが出てきてトレンドが変わっていったときと似たような時代だ。私は吸入と排気が一緒になっているような状況だと思う」

「4サイクルエンジンから言うと、まだ底ではないため(景気は)上を向いてはいないと思うが、新しい科学技術も含めた社会の変化を吸入しながら同時に排気も行っているような時代ではないか。最近は有り得ないことが起きる時代。トランプ氏の大統領就任やイギリスのEU離脱など中国の変調を含めて大恐慌に陥る芽がないとも言えない。モノの本には、何億分の一、何十億分の一という起こり得ない偶然的なものは続けて起こる確率は高いと書いてあった。中央銀行が有り得ないような金融政策を、政府と同じ目線で実施していることもかつてなら考えられなかったことだ」

「排気と吸入、つまり淘汰再編は東北ではまだまだこれからだが、3極とか4極と言われている北海道だってこれからですよ。北海道を見渡すと10年レンジで想定すると必ず経営に行き詰まるところがでてくるだろう。金融機関はお金がたくさんあっても今のスタンスならリスクテイクはしない。つまりリスクマネーは出さない。これは、私がかつて北海道銀行の社外取締役をしていたから体感として分かる」

「今の経済体質から行って10年持たずにリセットしなければならないところがでてくる。まさしくJR北海道と同じような先送りのツケのような場面が顕在化する。かつて北海道経済連合会会長の戸田一夫さん(故人)がよく言っていたが、『北海道は“でっかいどう”で夢があると言っているが、中央では北海道は“やっかいどう”と言われているんだ』と。実際に冷戦が終わったら北海道の地政学的な役割が薄くなって効率主義が求められるようになった。でも北海道で効率主義が機能する場面は限られている」

「そんなことから私たちは北東北と北海道を統合して経済圏を大きくすることで新たな存立基盤を構築する挑戦をしている。北海道は命名されてから2018年でようやく150年になるが、もう一度、“アンビシャス”をやるべき時期ではいないか」
(横山清社長のインタビューを本サイトが構成。以下、次回に続く)

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