大通公園とJR札幌駅を地下で結ぶ札幌駅前通地下歩行空間が12日に開通した。午前6時15分から往来できるようになり、札幌市の地下空間ネットワークが新たな一歩を踏み出した。駅前と大通の商業施設は一体化するのか、それとも駅前に吸い寄せられるのか。(写真は、記念式典中止の告知張り紙と賑わう地下歩行空間)
JRタワーができて8年、流通南北戦争と言われた駅前と大通の戦いは駅前優位で推移してきたが、今回の新しい公共空間の出現が人の流れをどう変えていくのか注目される。
地下歩行空間の開通を記念して午前10時30分から行われる予定だったセレモニーは、前日に発生した東日本大震災の被害を考慮して中止された。北3条広場で上田文雄札幌市長や道内選出国会議員らが出席して開催することになっていたが、震災被害が広範囲に及びしかも甚大であることから祝賀ムードを自粛する必要があるという判断があった。
それでも、行き来できる6時15分になると次々に人が集まり、時間の経過とともに往来する人は増え、正午ころには場所によっては肩がぶつかり合うほどの通行人たちであふれた。
札幌市によると地下歩行空間には1日4万人が行き来することになるというが、初日ということもあって、その倍以上の人が歩き初めを行ったようだ。
地下歩行空間という大動脈の誕生で札幌の商業地図が再び大きく変わる可能性もある。
前述したように、JRタワーの誕生は、大通商業ゾーンの地位低下を招いた。丸井今井や三越の苦境は消費低迷だけが要因ではなく、JRタワー誕生によって限られたパイを奪い合う競争で不利な立場に追いやられたためでもある。
地下歩行空間の誕生が、さらに大通ゾーンの賑わいを駅前が吸い取るストロー現象を加速する懸念も拭い難い。大通ゾーンには、昨年春にオープンした大通ビッセ(北洋大通センター)以外に新たな施設が誕生していない。2年後には石屋製菓と秋田銀行の共同ビルが誕生するが、地下の大動脈完成の受け皿としてはインパクトが弱い。
待たれるのは、丸井今井と三越によるデパートの建て替えだ。4月1日から新会社「札幌丸井三越」が誕生するが、新会社の役員に親会社三越伊勢丹ホールディングス社長が名を連ね、札幌の投資順位をかさ上げするくらいの策が欲しい。
地下歩行空間は、札幌中心部の背骨と言われるが、このままでは大通りゾーンの尻尾化がますます顕著になりかねない。