3月の株主総会後にアサヒビール(東京都墨田区)の社長に昇格する平野伸一副社長(60)が「抜群にうまい」、「ものすごくうまい」、「大化けする」と太鼓判を押しているのが、3月23日から発売する「アサヒ ザ・ドリーム」。1月末に札幌市内で行われた同社の「2016年営業戦略方針説明会」でも、平野副社長は「ビール業界ナンバーワンの責務として新たなビールの価値創造に挑戦する」と力強く訴えた。(写真は、「アサヒ ザ・ドリーム」350ml缶を持つ平野伸一副社長=右と江田善光理事・北海道統括本部長)
実は「アサヒ ザ・ドリーム」の発売時期は当初から今春と決まっていた。同社にとっては7年ぶりのビール新商品。この時期を逃せば、せっかく盛り上がってきたビール業界全体の復権ムードを失速させかねない。酒類のリーディングカンパニーとして、新商品の発売時期は今春をおいて他になかった。「週1回の営業会議で小路(明善)社長と私とで、いつもNGのダメだしをした。そのたびに生産本部長は真っ青な顔をしていた」(平野副社長)
健康に配慮した機能性ビールとして糖質はいくらでも抑えることは可能で、「糖質ゼロもできる。でもそうなるとシャブシャブでコクがまるでなくなってしまう」(同)。糖質を抑えつつ、コクとキレをどう出すか、生産現場の課題だった。また、試作品で美味しい味を実現しても量産ラインで生産すると美味しくないケースもあるという。量産化の壁というわけだ。
そんな難関を潜り抜けて誕生したのが「アサヒ ザ・ドリーム」。発売30年を迎える「スーパードライ」で培ってきたキレの技術と「ドライプレミアム」のコクの技術を生かし、「コクキレ」の両方を実現した究極のビールという訳だ。しかも健康面に配慮して糖質50%オフも兼ね備えている。
CMにはラガーマンの五郎丸歩氏を起用。五郎丸氏を巡ってはアサヒビールともう1社のビール会社がCM起用を競ったが、最終的に「スーパードライが大好きという五郎丸氏の意見で当社に決まった」(平野副社長)という。2019年のW杯ラグビー大会に向けて青少年ラガーマン育成に取り組む五郎丸氏を支援するパートナーシップ契約も結んでいる。
「アサヒ ザ・ドリーム」は、業界全体のビール復権を確実なものにするかどうか、新社長になる平野副社長の舌と喉が本物かどうか試されることにもなる。ちなみに北海道は札幌市白石区のアサヒビール園で全国に先駆けて3月初旬から飲めるそうだ。