食品スーパーに要求されるのは「地力」か「瞬発力」か――。帯広本拠の食品スーパー、ダイイチは、「地力」を経営の根幹に据えて「瞬発力」のディスカウント(DS)スーパーに立ち向かっている。北海道で初めてセルフサービスの食品スーパーを始め、「第一フードセンター」と名づけたDNAは、現在も連綿と生き続けているが、かつてない価格競争が繰り広げられている現在、果たして「地力」は「瞬発力」を凌駕できるのか。
ダイイチは、ディスカウント(DS)路線とは一線を画す店舗運営で地域に溶け込む食品スーパーを展開している。
鈴木達雄副社長は、DSの問題点を次のように指摘する。「仕入れの仕組みを変えオペレーションコストを下げてDSの原資を作っているというが、業態を変更してもローコスト運営にはならないのではないかと思っている。ローコストになったとしても、それは微々たるもので、結局、メーカーやベンダーに値下げ圧力を強めて他のスーパーチェーンよりも安く仕入れることがDSのモデルではないのか」
DS化に拍車が掛かっている食品スーパー業界は、裏返せばベンダーの代理戦争にもなっている。スーパー側はベンダーに値下げ圧力を強め、ベンダー側はそれに応じることでベンダー間の競争で有利に立とうとする。ベンダーのシェア争いがDSにも深く関わっている。シェアを伸ばす菱食、道内二番手を窺う加藤産業、日本アクセス、防戦気味の国分などDS展開のスタンスがベンダー間の鍔迫り合いを激しくしている。
DSはスーパーとベンダーの利害がある意味で一致しているわけだが、こうした「瞬発力」が生み出す構図は本当に消費者のためになっているのか。
鈴木副社長は、「DSと同じ土俵では戦わない。手間隙をかけて仕事をするのが当社の基本的な考え方」と強調する。
「価格はひとつのバリエーションで接客や商品を切らさないことが大事。リーズナブルな価格でおいしい商品ならお客は満足してくれるのではないか」(鈴木氏)
作りたて、出来立てを要求され割に合わないものの、新たな商品を提案し続けることがダイイチファンを作る要因になっている。
また、レジには肉や魚、グローサリーの社員も立てるように教育、混雑時にはこうした社員も総出で対応、2人でレジ対応することもある。「店舗の社員、パートの人たち全員の動きがあってこそ経営に生きてくる」と鈴木氏は言う。
目に見えなくて即効性のない教育投資に力を入れて福利厚生を充実させれば、社員やパートは生き甲斐を持って働く。「それが『地力』というものです」と鈴木氏。
ダイイチは、デパ地下のような売場とDSには手を出さないと決めている。来年度には札幌に3店舗目の新店をオープンさせる。
(写真は、帯広のダイイチ本社)