本拠地の苫小牧から札幌圏に北上中の食品スーパー、「フードD」が9月17日、江別市大麻に新店舗「フードD LISTA」をオープンした。
店名にあるDが示すようにフードDは当初はディスカウントをアピールする食品スーパーだったが、4~5年前から品質や品揃えをコンセプトに加え、「Q&D(クォリティ&ディスカウント)」を追求する「フードD食彩館」にリニューアルしてきた。
今回オープンした店舗は、Q&D路線で培ってきた店舗運営ノウハウをさらに充実させた新業態の実験店舗。新店舗の印象を一言で集約すれば、《デパ地下の賑わいを食品スーパーに付加した地域対話型店舗》と言えよう。
「まだオープン2日目だから、思っていることの3分の1しか出来ていないんだよ。パートさんたちも初めての体験だからね」とフードDを展開する豊月社長の豊岡憲治氏は18日、店内で苦笑いを繰り返した。
食品スーパーはデフレと競争激化の真っ只中に放り込まれており、どの店も集客のためには他の店よりも価格をいかに安くするかが鍵を握る。「でも、見てごらん。この目玉商品の『キャノーラ油』も思ったほど売れていないんだよ。私はね、価格でお客を呼ぶ効果は薄れていると思う。つまり、チラシの効果は以前ほどではなくなっている。ディスカウトントは限界まで来たことを実感しています。だから、別の価値を提供してくれる店をお客は求めているんです」
明るい照明や光沢を放つ床、真新しい陳列棚や冷蔵ケース。肩がぶつかりそうになるお客同士も新店特有の空気感の中で、忘れかけていた買い物の楽しさを素朴に感じているように見える。
「惣菜やてんぷら、寿司などこれまでお客に見えないところで作っていたものを、オープンキッチンで作るところもお客に見てもらいながらライブ販売しています。デパ地下の賑わいを食品スーパーに取り入れたということです」
さらに、この店では1日販売や5時間販売という試みも始めている。牛乳や食パンはその日に作られたものだけを定価販売、肉類なども製造後の5時間だけを定価販売し、それを過ぎたものは値引きシールを貼り、翌日になると半額という商品も出てくる。賞味期限から遡って商品を並べるのがこれまでの常識だが、この店では作ったその日とその時間から並べていく逆転の発想を取り入れている。
「お客が求めていることを具現化していくのが、この店の使命なんです。お客と共に食品スーパーの新しい価値を創造していくことが出来れば成功でしょうね」
店名のLISTAは、ラテン語でメニューを意味する。お薦めの素材をお客に提供したいという思いを込めてたという。
「食品スーパーの価値観を変えたいんです。価格だけではなく、地域のお客と繋がった店舗にしたいですね」
周辺には、隣接してホクレンショップがあり、少し足を伸ばせばマックスバリュ北海道が展開する激安店ザ・ビッグ、ラルズのビッグハウスもある。フードDの挑戦が食品スーパーの新たな地平を開くことになるのか、競合店はお客の動向に注目している。
(写真上は、惣菜のライブ販売コーナーに立つ豊岡憲治社長。下はフードD LISTA店)