「ユニクロ」と「セブン」提携の魔力と魅力

流通

「ユニクロ」のファーストリテイリングと「セブン―イレブン・ジャパン」のセブン&アイ・ホールディングスが年内にも業務提携することが明らかになった。それぞれの分野のトップ企業同士の提携は、衣料や流通の業界に今後何が必要になってくるのかを暗示しているようだ。IMG_8358(写真は、セブン―イレブン店舗)

 セブン&アイもファストリも常識を壊すことで成長してきた。セブンの鈴木敏文CEOとファストリの柳井正会長兼社長に共通するのは、破壊と創造の経営に尽きる。強烈な個性を持つカリスマ経営者だからこそ新天地に覚悟を持って突き進むことができるのだろう。

 明らかになった両社の業務提携の狙いは、セブン&アイにとってはファストリの力を利用したGMS(総合スーパー)のイトーヨーカドーの衣料部門強化、ファストリにとってはセブンーイレブンの物流網と店舗網を利用したネット通販の基盤強化だ。
 提携の端緒は互いに補い合える、目に見える双方のプラス効果に違いないにしても真の狙いはさらに先にあるのだろう。セブン&アイが進めるネットとリアル店舗を融合させて流通経路を複層化させるオムニチャネル戦略とファストリのSPA(製造小売業)戦略を掛けあわせれば、高齢化や少子化で縮む国内市場での新機軸と海外での戦略展開に布石を打つことができるかもしれない。手探りでも先に進むことこそ今回の提携の本質ではないか。

 懸念材料は、柳井氏のカリスマ型独裁体制と鈴木氏のカリスマ型民主体制の社風の違いを払拭できるかどうかだろう。ただ、柳井氏も鈴木氏も群れずに一人を好むという点では共通している。名誉欲を昇華して社会の先端を走る躍動の快感を燃料に両トップの飽くなき野望は消えることはない。セブンとファストリの業務提携には「何かが始まる」と思わせる力がある。魔力と呼ぶべきか、魅力と言うべきか。時代が触媒になれば2強の摩擦によってイノベーションが生まれることは間違いないだろう。

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