コープさっぽろ(本部・札幌市西区)が、「食のオムニチャネル」を標榜、事業構築に乗り出す。店舗、宅配、配食など食の供給先が多段階である強みを生かして生鮮食品の素材から完成品まで一貫生産体制を構築、供給のバリエーションも多段階化する。石狩工場(石狩市)に食のオムニチャネルを支える機能を整備、将来的には医療・介護に欠かせない食の生活支援分野にも進出する。大見英明理事長に食のオムニチャネルの中身を聞いた。IMG_6170(写真は、インタビューに答える大見英明理事長)

 ――石狩工場をどう整備していきますか。
 
 大見 7月から江別工場(江別市)が稼働することで石狩工場の豆腐、水物、揚げ物類が移管され石狩工場には1000坪くらいの空きスペースができる。そこに野菜を素材から半製品にするまでの前処理工場を作り9月から稼働させる。コープさっぽろの店舗向け惣菜や宅配事業、配食事業で使う惣菜類を作るのに必要な前処理した野菜の購入額は年間8億円に及ぶ。前処理から半製品まで作れるように内製化することでコストが安くなり、鮮度を保って店頭や宅配、配食に回せるようになる。また野菜をカットしたものを函館、苫小牧、旭川、帯広、釧路、札幌の道内6工場に配送し、そこで例えば八宝菜などにキット化すると店頭や宅配向けにも供給できるようになる。
 
 ――食のオムニチャネルを唱えていますね。
  
 大見 何がオムニチャネルかと言うと、素材、前処理、キット製品、最終製品の4段階で一気通貫もでき、各段階で出荷することもできるからだ。農産物を仕入れて、最終製品まで自前でダイレクトに作るメリットは大きい。生鮮系を最終製品まで垂直統合的にチェーンサプライができるようになり、これは強みになるだろう。全国のコープでも珍しい取り組みになる。
 セブン&アイ・ホールディングスの「オムニチャネル」は同グループが持っているコンビニ、スーパー、百貨店など多彩な業態を活かした多段階化、多機能化のことだが、コープさっぽろは食の多段階化、多機能化を目指すという意味で『食のオムニチャネル』を構築することにした。石狩工場では調味料、タレの内製化も始める。
 
 ――配食事業の幅も広げますね。
 
 大見 某企業の株主総会や社員集会向けにケータリングを行った実績がある。企業の周年行事やスポーツイベントなど行事食のニーズは強く、配食事業の『匠シリーズ』としてこの分野を強化、充実する。また、幼稚園・保育園の給食は、札幌圏を中心として60園向けに行っているが、函館でも子会社のドリームファクトリーで始める。配食工場は道内6拠点あるので他地域でも幼稚園給食などにチャレンジしていく。
 
 ――医療・介護向けの配食事業を強化していくことも掲げています。
 
 大見 食は医療・介護と密接に結びついており、コープさっぽろは医療機関とどう連携を構築するかを真剣に考えている。今の医療行政は手術後に早く退院させる方向だ。しかし、自宅に戻っても体の状態に応じた食事を作るのは困難。介護をしてくれる人がいなかったり、老健施設等に入れない高齢者も多い。その時に店舗や工場から各家庭までラストワンマイルで食事を提供できたら生命線は維持できる。このラストワンマイルでのコープさっぽろの役割は大きい。配食事業は2010年10月から本格的に始めているが、今後は医療・介護機関と連携して症状別に糖分や塩分を控えたオーダーメードの配食を行うことも始める。
  
 ――食のオムニチャネルでスーパー間競争と一線を画すことができる?
  
 大見 10年後には後期高齢者の比率が北海道で20%を超えるが、その時に食のマーケットは大きく変貌しているだろう。その人たちが毎日料理を作ることには抵抗感があって素材販売が縮小することは確実。さらに人口減少も重なって素材で売れるボリュームはどんどん落ちる。しかし、最終製品としての食事というのは絶対になくならない。コープさっぽろの強みは宅配や配食で個人の自宅まで、先ほどのラストワンマイルで繋がっていること。今後3年間かけて食のオムニチャネルを体系的に整備していく考えだ。スーパーマーケット間の競争でガチガチにやり合うのでは生き残れない。コープさっぽろは、ステージが違うところでチャレンジしていく。(終わり)


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