ツルハホールディングス(HD)の100%子会社、くすりの福太郎(千葉県鎌ケ谷市)が薬剤服用履歴(薬歴)を未記載のまま調剤報酬の加算を受け取っていた問題は、拡大戦略を続けるツルハHDのコーポレートガバナンス(企業統治)が不十分だったことを示している。ドラッグストアと調剤薬局の2つの部門で拡大戦略をとる同HDのアキレス腱が露呈したとも言える。(写真は、札幌市東区にあるツルハHD本社)
くすりの福太郎は、1957年創業。86年3月に保険調剤薬局の展開を開始、2007年5月にツルハHDとの株式交換で100%子会社になった。店舗数は189店でツルハの891店に次ぐ規模。調剤薬局はそのうち87店でこちらもツルハの156店に次ぐボリュームだ。
薬歴は処方箋を持参した人の過去の薬による副作用を聞いて記載保管したもので、この薬歴に従って薬の服用上の指導を行うと薬歴管理指導料として調剤報酬の加算ができる。
くすりの福太郎は、薬歴の未記載は13年3月の時点で69店舗中48店舗、合計約17万件だったことを明らかにしている。未記載のまま薬剤指導を行ったとして調剤報酬を加算していれば不適切請求に当たる。今後は、この点の社内調査が必要となる。
ツルハHDの14年5月期の売上高は3884億6500万円でそのうち調剤薬局部門は373億3400万円。調剤薬局部門の総利益率は35・6%で、処方箋枚数は413万5000枚、単価は9029円。
ツルハHDの拡大戦略は急ピッチで進んできた。13年だけを見ても7月に「かねまん薬局総本店マルモ薬品」の3店舗をくすりの福太郎が事業譲受、8月に「ウエダ薬局」(和歌山県海南市、14店舗展開)を子会社化して11月にツルハが吸収合併、10月には高知県須崎市に本社をおく「かもめ」の15店舗についてツルハが事業譲受、12月は広島市の「ハーティウォンツ」(142店舗展開)に66%出資、子会社化した。従業員数は、こうしたM&Aで増大、14年5月期にはハーティウォンツの子会社化で716人増えてHDのグループ全体で4897人になっている。
ツルハHDのこうした拡大戦略のコーポレートガバナンスを担保するのが、社外取締役も役割でもある。同社の社外取締役はツルハに13・12%出資するイオンの岡田元也社長とツルハが5・18%出資するクスリの青木の青木桂生会長の2人。今回明らかになった100%子会社、くすりの福太郎の薬歴未記載問題は、社外取締役を含めたツルハHDのコーポレートガバナンスが不十分だったことを示している。
ツルハHDの2015年1月15日現在の店舗数は1348店でうち調剤薬局は308店。ドラッグストア業界と調剤薬局業界はともにM&Aが活発に行われているが、調剤薬局は健康保険が適用される規制産業でもある。資本の論理が最大の武器とも言えるドラッグストアと2本柱で拡大戦略を執るツルハHDの死角が露呈したといえそうだ。