横山清アークス社長インタビュー③「2015年の北海道流通小売界を占う」

流通

 アークス横山清社長の新春インタビューも今回が最終回。このインタビューの中で横山社長が最後に強調していたのは、金融機関の姿勢だった。一般的には貸出しに積極的と見られている金融機関だが、横山社長の見立ては正反対。地方で展開するスーパーにとって金融機関の姿勢は再編を促す契機になる可能性も指摘した。IMG_2156(写真は、今年のスローガンを指さすアークス横山清社長)
 
 ――昨年はアークスの中核子会社、ラルズの新規出店が旧長崎屋跡への室蘭中央店(室蘭市)のみで抑制的に見えました。
 
「ケースバイケースで検討した結果、そうなっただけで意図的に出店を抑制したわけではない。2014年は年間スローガンの“総攻撃”のフレーズが注目を集め、買収や新店をどんどん出すのではないかと思われていたようだ。私が社内で言っていたのは、内にも外にも総攻撃をしようということ。今までできなかったことやだらだらと『まぁ、いいじゃないの』とやってきたことに区切りを付けることも内なる総攻撃。例えば典型的なのは狸小路商店街(札幌市中央区)のラルズプラザ札幌とラルズマート札幌の完全閉店が挙げられる。閉店することによって年間40億円強の売上げが減った。多少赤字でも継続する選択もあったが区切りを付ける意味で完全閉店に踏み切った。また、ラルズマート西岡中央店(札幌市豊平区)の閉店、酒の免許を持つイワイとラルズの合併なども内なる総攻撃の一環だった」
 
「外の総攻撃のひとつである室蘭中央店の出店も、これまでの居抜きリニューアル出店とは全く違うコンセプトだ。マスコミからは『リニューアルですね』と言われるが、私は『室蘭中央店はリボーンだ』と答えている」
 
 ――個別の話になりますが、まず道南ラルズの2015年の戦略は如何ですか。
 
「昨年12月に出店したスーパーアークス大縄店(函館市)は、出店が難しいと言われていたゾーンに満を持して出店した総攻撃の店舗と位置づけている。また、七飯町にも土地を取得して既に店舗設計に入っており、今年中にスーパーアークスとして新規出店する。渡島、檜山には約500億円のマーケットがあるので我々で300億円はやれるだろうと布石を打っている」
 
 ――アークスの道内戦略として各地域で300~500億円がひとつの到達点になりますか。
 
「道北地域は、ふじと道北ラルズが合併して道北アークスになって500億円が目の前にきている。エリアによって大まかには300~500億円というのがドミナント(集中出店して優勢になることを示す)のターゲットになっている。地域のドミナントを形成してリージョナルなマーケットシェア27~30%を目指してコツコツとやってきている」
 
 ――道東地域は、どういうドミナント戦略を組み立てますか。
 
「道東ラルズ(北見市)は篠原商店(網走市)と再編する方向で協議に入るが、場合によっては福原(帯広市)と一緒になるかもしれない」
 
 ――釧路、帯広地域は苦戦しているようですね。
 
「第一次の流通戦争が終わって、引き分けか少し有利な立場にいるというのが釧路・帯広地域での位置づけだ。今まで伸びていたのが少し止まったという感じで受け止めている。釧路地域は苦労したが、新しい店を一昨年に出店してひとつの核ができたし、厚岸地区も苦戦したがこちら側の勝ちで落ち着いている」
 
「十勝は、はっきりと(セブン&アイ・ホールディングスとイオンの)二つに分かれており、我々は防戦している状況だ。今は防戦しているが、10年後にどうなっているかをある程度想定しながら手を打っていく」
 
 ――確かに流通小売業界は10年レンジで見ていくと勢力図が大きく変化する業界ですからね。
 
「今年のスローガンに掲げた1兆円も10年計画だ。しかし、今まで目標に時間設定をしてもそれをオーバーしたことはないからね(笑)。人口減少や高齢化で地方のスーパーが大変な状況にあるが、さらに状況を難しくしているのは地方銀行など金融機関が資金供給を細めていること。統合や再編など地銀の置かれている環境もあって融資に慎重になっているからで、今年の大きな関心事の一つだ。流通小売界の変化には金融機関の存在があることを忘れてはいけない」(インタビュー終わり)

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