衆議院の解散と消費増税の延期がほぼ確実になったことで、食品スーパー各社の歳末商戦の行方が注目されている。12月は買い物需要が最も膨らむが、食品スーパー売上げは今年4月の増税以降、既存店の前年割れが続いてきた。消費税2%の上積みまで時間的余裕が出てきたことで消費者心理が改善すれば、これまでの冷え込みを歳末商戦で挽回でき、“失われた8ヵ月”の影響を最小限に抑えることに繋がる。(消費増税延期で12月商戦に期待がかかる=写真は食品スーパーの売場)
総選挙が消費にどう影響を与えるかは見極めにくい。一般的な見方は贈答用需要の落ち込みで百貨店はマイナス、宴会需要の低迷でホテルや歓楽街の人出は減るなどとされている。日常的な買い物の場である食品スーパーは選挙の影響は殆ど受けないとされている。ただ、今回は解散が消費増税の延期がセットになっていることで、食品スーパーには追い風が吹くと期待がかかる。
4月の消費税3%アップ以降、消費者心理には振幅があった。アベノミクス効果による景気回復が喧伝され賃金上昇の機運もあったため、4月は落ち込んだものの夏ころまで消費者心理は「景気回復か、停滞か」の見極めのような状態だった。しかし、円安による原材料価格の上昇で加工食品の値上げやガソリン価格高止まり、さらに北海道では電気料金再値上げが確定的になったことで9月以降、消費者心理は「景気停滞」で固定され一気に節約に向かった。
食品スーパー各社の既存店売上げは4月以降前年割れを続けていたが、9月以降はこの流れが一層強まりセールやポイント倍率を上げても一部ディスカウントスーパーを除けばほとんど効果が出ていない。
食品スーパーにとって12月は通常月の2ヵ月分以上の売上げがあり、1年の業績を左右する要の月だ。予定通り来年10月に2%増税の実施が決まれば、今年の12月は氷河期とともに迎える歳末商戦だったが、増税延期がほぼ確実になったことで最悪の状態は回避されることになりそう。
ただ、消費者心理は「節約」で固定化されているため、その心理をリセットさせるのは容易ではない。節約心理にお湯を掛けるような施策を巨大与党が掲げ、それにスーパー各社の創意工夫が重ならなければマイナスからプラスに反転させることはできないだろう。