道内各地の商店街でスタンプ・カード事業を行っている団体などで組織される「北海道スタンプ・カード協議会」は11日、札幌市中央区の東京ドームホテル札幌で第15回協議会を開催した。1998年に第1回が開かれて以降、毎年この時期に開催しているもので今年のテーマは『革新』。道内外から約300人の商店街関係者や団体関係者などが出席した。2回に分けて協議会の内容をレポートする。(写真は、講演する桑島俊彦氏)
基調講演を行ったのは全国商店街振興組合連合会最高顧問(元理事長)で東京都世田谷区の烏山駅前通り商店街振興組合理事長の桑島俊彦氏。スタンプ事業の草分けとして知られる烏山商店街を率いる桑島氏は、『これからの商店街事業の行方』と題し、商店街観光や補助金の上手な使い方、カード事業の新展開などについて熱弁を振るった。
桑島氏は、全国の小売業売上高約135兆円に占める各地の商店街の売上げ合計が約53兆円で4割にもなることを指摘、「それなのに3年前までは国からの補助金は年間30億円だった。商店街は地域コミュニティの担い手など多機能な役割を持つことを政府に強く主張した結果、アベノミクスの経済対策もあって2年前に補助金額が一気に10倍の300億円になった」と紹介。
しかし、その補助金も申請書の書き方が分からない商店街もあって180億円ほどが残ってしまったという。桑島氏は一計を案じ、こうした申請書の提出に蓄積がある地域の信用金庫に依頼、「例えば、『賑わい補助金』は上限400万円で使い切った後に国から振り込まれるが、その間のつなぎ資金を商店街が信金から借りることで信金に申請書を作ってもらうようにした」と信金をうまく取り入れるノウハウを全国の商店街に広めることなどで補助金を消化した事例を示した。
烏山駅前通り商店街では2015年度から4代目となる商店街ICカードを発行するが、そこに盛り込んだのが高齢者の見守り。同商店街の周辺人口は約10万人だが毎年15人ほどが孤独死しているという。「独居高齢者などにカードを持ってもらい来店頻度などによって見守りの機能を付加、それによって孤独死を5人以下に減らすのが狙い」と桑島氏。システムも含めて約5000万円の投資が必要だったが、国の『まちづくり補助金』や都、区の補助金で充当、同商店街は消費税分のみ支出してシステム構築ができたという。
桑島氏が今後の商店街事業として取り組むのが、「商店街ツアー」や「つまみ食いウォーク」など。地域ローカル商店街の生活文化に触れたり商店街にある銭湯に入ってもらうなど“マチナカ観光”で、「地域の7~10の商店街の食べ物をつまみ食いするウォークイベントの参加者をネットで募集したら2000人が集まった。ところが当日は土砂降りの雨。キャンセルが多いだろうと思っていたらほぼ全員が参加した。ネットの応募者は歩留まりが非常に高いことにびっくりした」とも付け加えた。
また、商店街のイベントとイベントを渡り歩くツアーも検討している。「商店街のイベントは平時における防災訓練。地域の人たちがイベントで知り合うことで防災隣組組織のようなものが自然に形成される。防災訓練に商店街のイベントを活用することは今後重要になるだろう」とアピールした。
桑島氏は、「自治体や大手企業の商店街を見る眼が変わってきた。商店街はこれまで発信力が弱かったが、地域のコミュニティをポイントにするなど工夫すればますます役割や機能は高まっていくだろう」と締めくくった。