道内で牧草の管理や乳牛の餌を供給している17のTMR(トータル・ミックスド・レイションズ=混合飼料)センターの全道組織である北海道TMRセンター連絡協議会は、1日に第7回定期総会と研修会を札幌市内の第二水産ビルで開催した。研修会では、セイコーマートの丸谷智保社長や北海道銀行の西山泰正産業戦略部部長らが講演、約250人の参加者が耳を傾けた。(写真左は丸谷社長、右は西山部長)
『北海道の資源を生かす経営』と題して講演したセイコーマートの丸谷社長は、同社の強みである製造、物流、販売の一気通貫ネットワークを北海道に特化して構築していることを紹介し、同社が出資している農業法人では「54町歩、約54ha農地でレタスやトマト、きゅうりなどを年間1277t収穫している。当社では年間8000t程度の農産物を消費するが、2割は自分の農場で作ったものを利用している」と語った。
また、「農産物はロスをいかに減らすかが大事。規格品は店舗で販売し規格外品はグループ会社で漬物やサラダにして加工して販売している。規格外品を100とすると95%は利用し本当にロスになるのは5%程度だ」とネックとされる規格外品の有効利用でコストを吸収している実例を示した。
苫前のメロンについても規格外品を買い付けて搾汁、自社ブランドのRB(リテールブランド)であるメロンソーダやメロンソフトクリーム、メロンゼリーに加工して販売、当初240kgで始まった事業も現在では8tまで消費量が高まっているという。
丸谷社長は、「高齢化社会と言うのは、年金所得者が増えて所得が向上しない社会。さらに高齢者の単身世帯も増えていく社会のこと。この10年間で道内人口は18万人減少したが、逆に世帯数は19万世帯増えている。単身化は増え続け、購買は家族購買から個人購買へ進む。その時に大切なのはマーケットを平面で捉えるのではなく3次元に捉えること。市場の変化等を大きくつかみトレンドを見る秘訣は、計数を最小単位まで落とし込み実現可能性を探ることだ」と訴えかけた。
次に、道銀の西山氏が『新時代のアグリビジネス~農業の6次産業化で未来を拓く~』をテーマに講演。西山氏は、道内の農畜産物出荷額の付加価値率に触れ、「全国平均が付加価値率28%なのに道内はそれよりも遥かに下回って47都道府県の45位。私もこの数字を知って愕然とした。つまり、一次加工をしても高次加工をしていない農畜産物がいかに多いかということだ」と述べて、「農業生産法人の多くはまだ生産中心だが、多角化へチャレンジしていくことが付加価値率のアップに繋がり、農業所得の安定、持続可能性のある産業になる」とした。
その鍵になるのが6次産業化と訴えた。その端緒は既に道内でも出ており、畜産関連の生産法人が肉牛販売の裾野を広げるためにレストラン経営に乗り出すなど、畜産の6次産業化の取り組みは3割もあって全国で突出しているという。「道銀も6次産業化のファンドを作って大きく投資する体制を取っている。経営の多角化と地域ぐるみの取り組みを組み合わせることが6次産業化成功のポイントになる」と語った。
研修会では、農林水産省生産局畜産振興課の大野高志課長による『飼料を巡る情勢』と題した講演も行われた。