JA北海道信連は23日、農業生産法人の連携強化を目指した「JAグループ北海道農業経営フォーラム~今こそ考える 何ができるか~」を札幌パークホテルで開催、系統団体や単協、農業生産法人、個人経営農家など約500人が出席した。カゴメの農業資源担当者や農業経営コンサルタントなど3人の講師が法人経営の課題や6次産業化の実例などを紹介した。(写真上段左からカゴメの佐野泰三氏、アグリビジネス・ソリューションズの森剛一氏、下段は西上経営組合の竹俣広幸氏)
最初に『進展するアジアのトマト農業からみた北海道野菜産業への提言』をテーマに講演したのはカゴメ常務執行役員農業資源担当の佐野泰三氏。中国のトマト産業は2008年で収穫面積150万ha、生産量は3380万tで世界規模に達していることを紹介、韓国では04~06年で生鮮トマト消費量が倍増したとし、その要因の一つが家庭での生絞りトマトジュースによるものと指摘した。
これからの農物の食マーケティングは「農業から需要を考えるのではなく、需要から農業を考えること、耕す農業や納める農業から売れるもの、求められるものを作りビジネスとして利益を得る経営的農業を目指さなければならない」と提言した。
また「中国の高速道路には緑色道という緑色の看板を目にすることがある。これは有機栽培農産物を運ぶ場合は高速料金が無料でガソリン代も補助するという看板。中国は交通インフラにも農業支援の手を差し伸べている。北海道も農産物を消費地に運ぶのに支援を考えても良いのではないか」と提案していた。
次に、全国農業経営コンサルタント協会専務理事でアグリビジネス・ソリューションズ代表取締役の森剛一氏(税理士)が『農業者かつ経営者へ~コンサル事例のから見た農業法人経営のポイントと経営者が押さえるべき数字』と題して講演。森氏はある農業大賞を受賞した農業法人が昨年の風水害で赤字になったことを紹介し、赤字の原因が加工用にシフトして供給責任が出てきたため原料となる農産物を他から購入して加工品を作ったことによると分析、「生食用から加工品にシフトするのは発展だがリスクが伴う。農場を一か所だけで完結させていると供給責任から不測の事態になったときに対応できない。大きくなったゆえのリスクを乗り越えるためには、離れた地域の仲間との連携、協同が必要」と述べた。
さらに、農業経営の分岐点は設備投資のタイミングと判断だと強調、「皆がやったから当法人もやる、というのが失敗の典型パターン。市場との対話ができるようにならなければならない」と語った。農業は工業と同じようにものづくりであり、売上総利益や売上高材料費比率などの経営指標を把握していくことが不可欠とした。
最後に、JA鹿追の農事組合法人西上経営組合の竹俣広幸組合長理事が『農業法人経営に必要なこと~過去の経験から学ぶ農業法人経営のポイントと6次化への取り組み~』をテーマに講演。同法人は20年ほど前にいちご狩り観光農園やログハウスレストランなど6次産業化に繋がる取り組みを始めたが、結局観光農園は飽きや少子化による来園者減少で昨年撤退。しかし、現在は切干大根の加工・販売事業が口コミで広がり、「良い原料を使って良い商品を作りお客様に満足してもらうと口コミで広がり、自然とリピーターを確保できるようになる」と述べ、切干大根は収益を下支えする人気商品として6次産業化の成功事例になったことを説明した。
竹俣氏は、「安価・大量生産の加工品と一線を画した高品質の加工品は消費者の潜在ニーズに即しており、少量・高価でも売れる」と参加者にアドバイスしていた。