「野菜や花卉の産地には、自衛隊や刑務所がある」――北海道の野菜や花卉産地には、必ずと言ってよいほど自衛隊の基地や駐屯地が存在するという。また、「月形の花」として知られる月形には刑務所がある。その理由は、自衛隊員や刑務官の夫人たちが野菜収穫や花卉栽培の労働力としてなくてはならないからだ。労働力を通年で確保できることの意味は大きい。自衛隊屋刑務所は、北海道農業を支えている側面もある。


野菜の収穫や花卉の生産には欠かせない出面さん。忙しいときに手伝ってくれるパートさんのような意味だが、この「出面さん」というのは、英語の「デイ・メン」(その日のオトコ?)から来ているという説もあるが、今はこの出面という言い方も「アグリパートナー」に変化している
道内の野菜や花卉の産地と言えば、名寄、富良野、恵庭、千歳、美幌などがあるが、いずれの産地にも自衛隊の基地や駐屯地がある。野菜の収穫や花卉生産には、熟練した労働力が必要だ。農業は機械化が進んでいるから、手作業の労働力はあまり必要としていないと考えがちだが、野菜類や園芸作物については熟練した手作業が欠かせない。
トマトの収穫で良いものと悪いものを見分けたり、にんじんを吊ったりするのも手作業だし、かぼちゃやメロンは生育の途中で一つだけ残すものを見分けるなど野菜類の熟練には3年から5年の経験が必要だという。
自衛隊員の転勤で夫人も一緒に引っ越した場合でも、道内であれば野菜や花卉産地に引っ越すことになるので、熟練した農作業の担い手として引き続き重宝がられることになる。
労働力をいかに確保するかは、農業にとっては生命線。その労働力を必要とするピーク時期が重ならないように、生産する野菜類を組み合わせて成功したのが富良野。野菜類の生産をシェアリングすることで労働力のシェアリングに結び付け、労働力不足を解消させたものだ。
自衛隊縮小の反対運動は、お膝元のマチで消費人口が減少しマチの過疎化が進むことを懸念する意味が大きいが、農業労働力が減少する危機感も含まれている。北海道農業を守り発展させていくことに、自衛隊は欠かせない存在ということもできる。

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