日高本線の鵡川と様似の間が4月1日に廃止され、胆振と日高を結ぶ鉄路は84年間の歴史に幕を閉じた。最後の6年間は高波被害によって運行を休止していたため、列車が走ることなく廃線になった。役目を終えた鉄橋は、そのままの姿で残っている。最終日の3月31日、「日高本線」早春の鉄橋を点描してみた。①様似川橋梁(様似郡様似町栄町) 上の写真、以下同じ。
様似駅を出ると右に旋回して延びる鉄路が最初に渡るのがこの鉄橋。上流に様似ダムがある様似川は延長22・3㎞の二級河川。鉄橋の向かうには標高810mのアポイ岳=右をはじめとするジオパークの姿を望むことができる。
②日高幌別川橋梁(浦河郡浦河町西幌別)
浦河町と広尾郡大樹町の境にある日高山脈のピリカヌプリに源を発して太平洋に注ぐ延長36・9㎞の二級河川、日高幌別川に架かる鉄橋。国道336号線と並走しており、今にも気動車が見えてきそうな感覚になる鉄橋だ。
③向別川(むこうべつ)橋梁(浦河郡浦河町築地)
日高振興局など行政機関が集まる日高の中心地の浦河。駅を出ると内陸に入っていく鉄路に架かるのがこの鉄橋。年輪を感じさせる橋脚が印象的。
④三石川橋梁(日高郡新ひだか町三石旭町)
新ひだか町にあるセタウシ山西部に源を発し三石ダムを経て太平洋に注ぐ延長31・6㎞の三石川。河口に近い場所に架かるのがこの鉄橋。穏やかな川面に列車の姿が映ることはもうない。
⑤捫別川橋梁(日高郡新ひだか町東静内)
アイヌ語で「静かな川」を意味する「モ・ペッ」から名付けられたのが二級河川、捫別川。文字通り静かな流れが蛇行して流れをつくっている。
鉄橋は旅情をとりわけ掻き立てる。列車の音が鉄橋と共鳴してリズムを刻むと旅の高揚感が一気に高まる。日高本線ではこんな臨場感を体感することはもうできないが、そこに鉄橋があるだけで記憶のスイッチが入ってしまうような存在感がある。これから10年、20年、鉄橋が再び日の目を見ることはない。朽ちていく姿は周囲の景色にどう溶け込んでいくだろうか。
(写真は、様似駅で出発を待つ気動車=2013年10月13日撮影)