日高本線の鵡川~様似間116㎞が、2021年4月1日に廃止されることになった。苫小牧と様似駅まで146・5㎞が全通した1937年8月以来、84年で路線の8割が消えることになる。鵡川と様似間には大小含めると数多くの鉄橋がある。川を渡る鉄橋にはそれぞれ個性があり旅情をかきたてるものだが、廃止される日高本線の鉄橋は長く使われておらず寂寥感を色濃く漂わせている。消えゆく日高本線の橋梁を点描してみた。
①静内川橋梁(日高郡新ひだか町静内入船町)=上の写真、以下同じ。
河西郡中札内村のカムイエクウチカウシ山付近を源とする延長69・9㎞の二級河川である静内川が、太平洋に注ぐ河口にあるのが静内川橋梁。
②新冠川橋梁(新冠郡新冠町)
日高山脈最高峰の幌尻岳(2052m)に源とし、奥新冠ダム、新冠ダム、下新冠ダム、岩清水ダムを経て太平洋に注ぐのが、延長77・3㎞の新冠川。新冠川橋梁は最も河口に近い橋梁。河口に聳え立つ岩壁は「判官館」と呼ばれ、太平洋を望む「判官岬」がある。
③厚別川橋梁(沙流郡日高町厚賀町)
沙流郡日高町と同郡平取町、新冠郡新冠町の接点にあるリビラ山に源を発する延長42・8㎞の二級河川が厚別川。その河口に架かっているのが厚別川橋梁。
④慶能舞川(けのまい)橋梁(沙流郡日高町)
沙流郡門別町清畠に位置し、日高山脈南西部の標高441mの山に源を発し、太平洋に注ぐ延長16・3㎞の二級河川の慶能舞川。橋梁の半分ほどが16年夏の台風による高波で流失した無残な姿を晒している。
⑤沙流川橋梁(沙流郡日高町)
沙流郡日高町北東部の上川郡清水町との境界にある日高山脈北部の熊見山(1175m)に源を発し、二風谷ダムを経て太平洋に注ぐ延長104㎞の一級河川に架かる橋梁。沙流川は国土交通省の全国一級河川水質調査で1位に選ばれたことがある。
廃止される鵡川と様似の間は、15年1月の暴風雪によって厚賀と大狩部の間で線路に敷かれていた土砂が流出、鵡川と様似間が不通になった。一時的に静内と様似の間で運転を再開したものの1ヵ月で再び運行が休止、バスの代行輸送が続いている。紹介した橋梁は以来、ずっと使われておらずその姿は寂寥感を色濃く感じさせるものばかりだった。気動車が通らない、主なき鉄橋は黙って冬の景色に溶け込んでいる。
(写真は、日高本線静内駅で列車交換する気動車=2013年10月13日撮影)