札幌ハイヤー協会が北海道運輸局を相手取り、札幌エムケイの低額運賃を認めて事業許可を出したのは違法だとして認可の取り消しを求めた行政訴訟から2年半が経過した。ラウンドテーブル法廷での口頭弁論はすでに13回を終え、札幌ハイヤー協会側は、札幌エムケイの経営実績等を開示すべきだと主張。裁判長もエムケイの出席を要請するなど経営実績の開示を求める方向に進んでいる。次回9月8日に行われるラウンドテーブル法廷でどこまで開示されるのか注目される。
札幌ハイヤー協会が道運輸局を提訴したのは、札幌エムケイの初乗り550円という低額運賃では利益が見込めないのに事業許可した道運輸局には瑕疵があるというのが理由。札幌ハイヤー協会は道運輸局に許可取り消しを求めている。
これまでに協会側と運輸局側は準備書面を出し合うラウンドテーブル法廷で主張の調整を行ってきたが、協会側は「道運輸局がこれまでに2回、札幌エムケイの低額運賃を認めたのは低額運賃でも利益が出ていると判断したのが理由のはず。それならば低額運賃でも利益が出ている実績を開示すべき」と主張、裁判長も理解を示して札幌エムケイにラウントテーブル法廷への出席を要請。
7月7日のラウンドテーブル法廷では、札幌エムケイは出席せず電話での参加にとどまり進展はなかった。このため、裁判長は次回、9月8日にはラウンドテーブル法廷に参加し経営実績を可能な限り示すことを札幌エムケイに提案している。
札幌ハイヤー協会によると、協会加盟社のタクシー1日1台当たりの実車距離は78㌔で運送収入は2万7000円が平均だとしている。利益が出せる水準は各社によってまちまちだが、少なくとも平均値であれば経営は継続可能。この平均値を使って札幌エムケイの経営を類推すると、2人で1台を利用するため、実車距離は156㌔、運送収入は5万4000円。この水準に達しているかどうかがポイントになる。
ところが、エムケイの全国グループの中には3万7000円という数字が出ており、札幌交通圏加盟社の指標である5万4000円を大きく下回るところもある。
エムケイ(京都)と大阪、神戸のエムケイ3社は、今年1月に近畿運輸局がタクシー運転手の1日の走行距離を250㌔とする距離制限をしたのは、行政の裁量権の乱用として国に制限取り消しを求め大阪地裁に提訴している。一方、近畿運輸局は7月に神戸エムケイが距離制限に違反したとして70日間の車停処分を行った。
札幌エムケイの車両台数は現在100台で当初2年間で450台という目標は、増車規制の中で達成できていない。訴訟の当事者にはなっていない札幌エムケイの経営実態がどこまで開示されるのかは見通せないが、11月から始まると見られる通常法廷での口頭弁論で札幌ハイヤー協会はどこまで道運輸局の瑕疵を具体的に指摘できるか、行政訴訟はヤマ場を迎えている。