札幌交通圏のタクシー業界に減車効果が出てきた。総台数の約10%にあたる約500台をタクシー会社が自主的に減車して実車率や運送収入の改善を進めているもので、年末年始はようやく前年実績を超えた。
経営改善や運転手の収入アップを進めるには二弾、三弾の減車が必要になるが足並みは揃っていない。
札幌交通圏では、2002年に始まったタクシーの規制緩和で参入が自由になったため、車両台数が08年末までの6年間で1126台も増え合計6666台(個人含む)にもなっていた。
過剰気味になったタクシーは、景気低迷の影響を受け飽和状態が続き、実際に利用者を乗せて走る実車率や運送収入が減少、前年割れの厳しい状況が続いていた。
一昨年10月には、3年間の時限立法で台数を制限できる「タクシー事業適正化・活性化特別措置法」が成立、札幌交通圏でも、タクシー事業者や行政、学識経験者、消費者団体、労働組合などが参加した「札幌交通圏タクシー事業適正化・活性化協議会」が昨年3月に「札幌交通圏では10~35%が過剰」という答申を出していた。
札幌交通圏のタクシー会社で構成される札幌ハイヤー協会では、この答申を受けて4月初めに各社が自主的に10%減車することを正式決定し、個別に道運輸局に減車を申し入れた。
1日当たりの売上高が9000円以上にならないと稼動させない休車を含めて減車する総台数は497台で、個人タクシーを除いた法人所有台数の約10%に当たる。
減車効果が現れてきたのは、昨年の8月ころから。
実車率の推移は、8月101・92%、9月102・78%、10月101・00%、11月101・22%で年末12月は101・72%になった。実働1日1車当たりの運送収入も12月は103・60%で前年同月を上回った。
札幌ハイヤー協会の照井幸一専務理事は、「年末はタクシーが足りないという状況ではなかったが、実車率、運送収入がともに前年の12月を上回ったことは減車の効果が現れたと見ている」と語る。
今年1月に入っても実車率は103・72%、運送収入も102・70%となっており、前年超えの流れは続いている。
ただ、実車率や運送収入の改善が運転手の収入など労働条件の改善にはまだ結びついておらず、さらに減車を進める必要に迫られている。
しかし、タクシー各社が自主的減車を表明したにもかかわらず、実際には減車を行っていないタクシー会社は10社ほどあるという。「保有台数が30~40台の事業者ではなかなか減車に踏み切れないようだ」(照井専務理事)
また、特別措置法が成立する以前に増車した北海道交運グループは、減車には踏み切っているものの、増車以前の台数から10%減車すべきという意見も業界内から出ているという。
ちなみに札幌ハイヤー協会に非加盟の札幌北交ハイヤーは、昨年7月に21台の減車を行っている。同じく非加盟の札幌MKは減車を行っていない。
札幌交通圏タクシー事業適正化・活性化協議会は、5月の大型連休明けに開催される予定で、その席で2010年度の輸送実績を分析し、減車効果を見極めることにしている。