JALの経営からの撤退によって北海道エアシステム(HAC)新体制づくりが最終局面を迎えている。道は2月23日にHAC離陸に向けた補正予算6億2500万円を提案するが、新生HACの社長が未定のままで道議会が賛成できるのかという声も少なからずある。(写真は、丘珠空港から離陸するHAC機)
新生HACは、年度内始動に向けた最終的なヤマ場を迎えている。
「JALストーリーならぬHACストーリーがあったのではないか」――道内経済界からこんな声が上がるほど、今回の新生HAC誕生に至る道程は、JALとタッグほ組んだ道に押し切られたという印象が強い。
JALがそもそもの黒子で、道はそのストーリー通りに動いた舞台俳優といった役どころだろう。
減資や資産再査定(デューデリジェンス)による株価算定など、JALストーリーに沿った動きは、JAL寄りであったことは否めない。新たな株主になる札幌市や他の自治体、経済界から株価に対する異議が出てくると、道は株価を再算定。しかし、新たな算定先を探すことなく当初からこの問題に関わっていた弁護士・公認会計士のチームに再び依頼。
結局、当初の株価から下がったものの、これまでにHACにつぎ込まれた補助金などを組み込んだデューデリを徹底すれば、さらにHAC株の現在価値は下がっていたのではないかという見方も強い。
新生HAC誕生に向けた舞台の主役である道は、時に押したり引いたりしながら札幌市をまず陥落させ、続いて釧路市や函館市、旭川市などの就航先自治体を攻め落としていく。
その上で、経済界に出資を事実上迫っていった。
札幌市の幹部はこう言う。
「道の進め方には不信感があった。札幌市に対して、肝心のところは隠しながら包囲網を築くやり方だったからだ。このままでは『新生HACが頓挫するのは協力しない札幌市が原因』というような世論が形成されかねず、道に押し切られた感が強い」
また、経済界からの出資についても、「他社も出資しているから」と包囲網を狭めていき、最終的には札幌市と同様、新生HACに協力しないのは非国民ならぬ非道民というような世論形成を築き上げていった。
23日に、道は予算計上という最大のヤマ場を迎えるが、未だ新生HACは“画竜点睛を欠く”状態。龍を描いて最後に瞳を書き加えると、龍が天に昇っていったという故事になぞらえると、最後の瞳は新生HACの社長だ。
瞳が決まらない段階で、道は6億円強の補正予算を計上する。
道議会に対しても、「新生HACが頓挫しても良いのか」と迫っている構図にも見えてくる。
道は舞台の主役として、その役割を見事にこなしたといえるのかもしれない。しかし、新生HACという果実を作った功績とそれに至る過程で広がった不信感を差し引くと、主役の評価は及第点には達しないだろう。
画竜の点睛は、一体誰になるのか。観客は覚めた目で舞台のクライマックスを眺めている。