『北海道新幹線が札幌まで来ることがやっと本決まりになりそうだ』――そう感じさせるような熱気がこの会場に溢れていた。11月11日午後3時、札幌グランドホテル別館2階のグランドホール。
ここに続々と詰め掛けたのは知事や札幌市長、道内選出衆議など道内の政治、経済の中心人物ばかり約700人。北海道新幹線「札幌延伸」に向けての緊急総決起大会が開かれたのだ。
集まった顔ぶれはそう変わらないが、変わったのは集まった人たちの新幹線にかける本気度である。自民党政権時代終盤に一度は近づいた札幌延伸が、昨年8月の政権交代で遠のき、整備新幹線の財源になるのでは、とされた鉄建・運輸施設支援機構の埋蔵金が国庫返納。北海道新幹線の札幌延伸がお先真っ暗になったことが返って延伸運動に拍車をかけたからだ。
人は逆境になるほど本気になるとはよく言ったもので、北海道新幹線札幌延伸運動は民主党政権になってからむしろ上げ潮ムードに包まれている。
10月の衆院道5区補選で小選挙区選出に返り咲いた町村信孝衆議は「道内選出の民主党代議士と超党派で北海道新幹線の建設を勝ち取るための運動体を作る」とこれまでにないほど踏み込んだ具体的な発言をした。
また、鉄建・運輸施設機構が持つ1兆3500億円の利益準備金については、議員立法で整備新幹線等に使えるように国会提出し、菅政権が進めようとしている一般財源化を阻止することも表明した。
決起大会に遅れて到着した荒井聡民主党道連会長は、「民主党が7月の参院選で敗北した原因は、消費税問題ではないと私は菅総理に言った。疲弊した地方経済の再起、再興のメッセージがなかったことが敗因だと。 公共事業、とりわけ土地改良事業の大幅削減で北海道は厳しい情勢だが、その中での明るい材料は北海道新幹線だ。今まで何度も促進運動があったがいつも財源問題で行き止まり。しかし、新たな財源が見つかった。(鉄建・運輸施設機構の)1兆2000億円。その使い道として一番強い要望は整備新幹線の財源にすること。ここから先は政治力だ。1兆2000億円の財源処理をどうするかを決めたい」とリップサービスが含まれていたものの、この考え自体は町村氏と同じ。
この決起大会を主催した北海道新幹線建設促進期成会では、今年5月から8月にかけて札幌延伸の署名活動を道央だけどなく道北、道東でも展開。その結果集まったのは08年大きく上回る61万5676名。
会長代行の高向巖道商連会頭は、「道民の総意を乗せて馬淵国交大臣に署名を手渡す。北海道新幹線は日本の国土の背骨を作り、交流人口の増加、環境にも最適の高速交通網。偏狭の地、北海道を守ることを明確に示してもらう。新幹線は待っていても来ない。大きな声を上げて全ての関係者に誘致のために働いてもらう」と述べていた。
決起大会の最後を締めくくったのは上田文雄札幌市長。上田氏は札幌延伸に向けて『ガンバロー』の三唱を提案したが、その際のコメントは上田氏の政治的な脱皮を感じさせるものだった。「私が『ガンバロー』と言うとお里が知れるのであまり言いたくないと思っていたら、ここにおられる町村先生が(補選当選で)ガンバローを三唱されていた。大いに勇気付けられたから皆さんも腰に手を当てて『ガンバロー』を唱和願います」
平成23年度予算に整備新幹線の予算が計上されるにはこの12月が勝負になる。残り1ヵ月、札幌延伸が実現するかどうか、北海道の未来を賭けた本気の戦いが繰り広げられる。『ガンパロー』の声が未来を引き寄せるのかどうか、時間との戦いが始まっている。
(写真は、北海道新幹線「札幌延伸」を求める緊急総決起大会の締めくくりで上田文雄札幌市長の掛け声で『ガンバロー』の三唱をしているところ)