ANA子会社のエアーニッポンネットワーク(A―net)が6月30日で丘珠空港から撤退、新千歳空港に集約してから半月経ったが、A―netのドル箱路線だった「丘珠―中標津」路線の搭乗客が新千歳発着になったことによってガタ減りだという。


中標津は人口2万4千人を超える。根室管内を含めると5万人に近い。中標津は根室管内の中心として周辺人口を吸収しつつ、拡大を続けている。このためにビジネス需要も活発で道銀も中標津に支店を開設したほど。さらに根室管内から札幌の高度医療を受けるためにこの路線を利用する患者も多く、生活路線そのもの。観光需要はむしろ少ない。
丘珠空港は札幌中心部から20分で着き、しかも空港ビルとエプロンまで直結しているため利便性は高い。新千歳発着では札幌中心部から1時間は必要でしかも目的の飛行機に乗るまでの移動距離が巨大空港ゆえに長い。
道内を移動するのに、東京や大阪に飛ぶ感覚で空港まで行くことにムダを感じる利用客も多いことだろう。
A―netの新千歳空港集約は札幌市民の生活路線を奪ったと言っても良く、中標津路線のガタ減りはそれを裏付けている。
その路線を利用していた乗客はどこに消えたのか?新千歳―釧路線に吸収されたのか、あるいは対抗する北海道エアシステム(HAC)の「丘珠―釧路線」に振り向けられたのか。ただ、釧路と中標津の距離は90㌔ほどあって車を運転するには「ひと仕事」の感覚がある。そんなこんなで、消えた丘珠―中標津路線の逸失需要はかなりのものになる。
そこで期待されているのがHACの「丘珠―中標津」路線の開設だが、HACは大株主のJALの腰が定まらず、2位株主の道も事業体制・事業戦略を未だに決められないでいる。とりあえず資本構成は「JAL14%、道37%、札幌市や函館市など14%、民間企業35%」と決まったものの、民間資本の当てははっきりしない。
一部には道銀が出資に意欲的と見られているが銀行だから5%出資が限度。他を道銀の融資取引先の親睦団体「らいらっく会」のメンバー企業が引き受けるのかどうか。
HACは「道民航空」ではなく、「道銀航空」として離陸してANAの牙城である中標津に切り込むのも一つの戦術。ANAにとって中標津を独占する大義名分は薄いのだから。
(写真は、丘珠空港をベースにしていた頃のA―net)

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