農業者の第三者承継で新たな担い手創出、道銀と(一社)一次産業事業承継協会が業務協定 

金融

 北海道銀行(本店・札幌市中央区)は2025年12月12日、農業者の事業承継を促進するため、一般社団法人一次産業事業承継協会(東京都文京区)と業務協定を締結した。農業者の後継者不足が深刻化しており、第三者承継と言われる民間企業や農業法人への承継を支援する。一次産業事業承継協会が、金融機関とこうした協定を結ぶのは初めて。(写真は、道銀と一次産業事業承継協会の業務協定締結式。左から道銀・千谷伸之法人ソリューション部部長、同・北川晃平執行役員、一次産業事業承継協会・小島拓也代表理事、同・荒井洋一理事)

 北海道農業の担い手減少が進んでいる。道農政部の調べでは、個人や法人を含めた農業経営体の数は、2005年に5万5千あったが、2025年に2万9千にほぼ半減。また新規就農者も減少しており、2024年には、初めて400人を割って372人になった。一戸当たり耕地面積は2025年で平均約34・5 haと大規模化しているものの、家族経営ではこれ以上の面積を持続していくことは、難しい状況になり始めている。今後、農業者の高齢化で離農が増えれば、農地は承継されずに耕作放棄地になってしまうことも懸念されている。

 そうした中で、農地所有適格法人や企業の農業参入が増えており、親族経営から農業法人、企業への第三者承継という新しい選択が広がりつつある。しかし、農業者の事業承継には、農業者が抱える課題の整理や法務、税務、組織面の助言に加え、場合によってはM&Aや再編を含めた、承継計画といった専門的な支援が欠かせない。

 道銀は、「農業経営塾」などを通じて農業者ネットワークを構築しており、今後増加する農業者の事業承継を積極的に進めるため、一次産業事業承継協会と業務協定を結ぶことにした。一次産業事業承継協会は、2025年4月に設立されたが、代表理事の小島拓也氏は、税理士法人小島会計(本社・深川市)の代表社員として10数年来にわたって農家・農業者の事業承継に100件以上取り組んできた。小島氏は、今後さらに農業者の事業承継は増加するとみて、みらいコンサルティンググループ(同・東京都中央区)、西村あさひ法律事務所(東京都千代田区)などと同協会を設立した。なお、小島氏は、グループで農業生産法人を展開しており、農業者としての当事者目線も併せ持っている。

 道銀によると、農業者の第三者承継受け皿として、食関連企業や物流、建設、IT、人材サービスなど多くの業種が興味を示しているという。「当行のホームページを見て、今まで接点のなかった本州企業がいきなり連絡をしてくるなど、問い合わせが非常に増えている」(千谷伸之法人ソリューション部部長)。同協会の小島氏は、「農業の承継は、経営だけではなく、生産者の人生と地域の営みを次に繋いでいく仕事。その思いを大切にしながら、道銀とともに北海道農業の未来に貢献できるよう尽力したい」と話していた。
※2025年12月16日記事一部修正しました。辻井賢理事→荒井洋一理事。お詫びして訂正いたします。

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