IMG_9218道内最大規模の信金理事長として手腕に期待が集まる旭川信金の原田直彦氏(54)。等身大で言葉を発する姿勢には、地域金融機関を指揮するトップとしての安定感と信頼感を滲ませる。金融行政がリスク対応から成長支援に転換する中で、再編問題の浮上も予想されている。インタビュー最終回の今回は、原田理事長の信金観を含めて持論を聞いた。(写真はインタビューに答える原田直彦理事長)
 
――地域金融機関は、貸出金減少、預金増大のトレンドが続き本業の収益源である貸出金利息と預金利息の利ザヤが年々減少しています。道内に23ある信金の再編問題についてはどう考えていますか。
 
 原田 今のところは預金量の少ない金庫も含めて「自力でやっていく」という気持ちが強い。不良債権を大きく作ってしまうとか運用で失敗して損が大きく出るなどということが原因での再編は北海道ではないだろう。
メリット、デメリットがあって何とも言えないが、これだけ法制度対応とかシステム関係も含めて本部機能の仕事量負担が大きくなるとすべて個別金庫で対応していくのは大変になっていくだろうなとは思う。また、今の金利水準が続くと同じことをやっていたら業務収益が下がってくるのでそこをどうしていくかが課題。そうであっても一緒になるメリットやプラス効果は少ないだろう。
 
――金利の先高観はあるのでしょうか。
 
 原田 多くの道内金庫は半分以上を運用に回している。金利が0・5%でも上がっていけばこうした余資運用でも収益は厚くなる。ただ、金利があがっていく状況にはないようだ。個人的にはインフレ率を2%にしようと言っているのに金利が上がって行かないことには少し違和感がある。かなり無理して押さえているのではないかという印象だ。どこかの時点で金利上昇局面になることも考えられなくはない。我々金融機関は徐々に金利が上がっていくことには対応できるが、急激な上昇は気がかりだ。
 
――前期は23信金の中で2信金が赤字でした。不良債権に分類されていない貸出先の突然死の影響を受けたものですがどうすれば防げるのでしょう。
 
 原田 一般的には大口の融資先には特に注意度は高まるが、結論から言うと1社に30億円も40億円の融資というのはあまり好ましくない。最大でも20億円程度で仮に頓挫しても単年度でカバーできるかどうかが目安になるのではないか。自己資本があるから赤字になってもカバーできるのは確かだろうが、やはり小口多数というのが本当の意味で信金業態の融資の基本ではないか。要は損失が出ても単年度の収益でカバーできるかどうかが一つの基準だ。
 
――最後にモットーや趣味を教えてください。
 
 原田 趣味は小学5年からやっているソフトテニス。現在も旭川ソフトテニス連盟の副理事長をしている。月に1回か2回は楽しんでいるが、仕事の話が一切絡まないのでリフレッシュできる。もっとも、元来があまりストレスはたまらないタイプだ。末っ子でB型ということもあるのかもしれない。
 
 座右の銘は“慎独(しんどく)”。1人を慎むと読むらしいが、何年か前にこの言葉を目にして座右の銘にしている。要は1人の時に何をしているか、お天道様が見ている――ということ。この古典の言葉を自分に言い聞かしている。いっとき一時を大切にするということにも通じる。
(この項終わり)



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