北海道財務局は26日、『金融仲介の質の向上に向けたシンポジウム』を開催した。今年度は14回目で、会場になった札幌市北区の札幌第一合同庁舎2階講堂には金融関係者など約150人が参加した。(写真は、講演する濱田康行氏)
今回のシンポジウムのテーマは、『金融機関と地域との連携のあり方~北海道における地域産業のイノベーションと地域金融機関の役割~』で、基調講演を北海道大学名誉教授で公益財団法人はまなす財団理事長の濱田康行氏が行った。
講演のテーマは、『北海道に果たす金融の役割~金融業の華はどこへ行った?』。濱田氏は、30年ほど前は金融が産業界の華だったとし、自身が北海道大学経済学部の助教授時代、卒業生の3分の1が金融業に就職していたことを紹介。しかし、2008年のリーマンショック以降、金融人気は後退、華が失われたとした。
「米国を中心に金融の世界が生産・ものづくりと関係なく動き出すようになって自己完結に見えた世界がリーマンショックで崩壊。それが実物経済に波及、GM(ゼネラルモーターズ)を米国政府が救ったように、それ以降は国家先導資本主義になった」とした上で、「金融業の華が失われたのは、金融業が外の変化に追随していただけで構造変化に対応を怠り、金融市場の主要な構成員から今では駒(パーツ)にすぎなくなったため」と断じた。
地域金融機関は、こうした動きから距離があったため傷は浅く健全性がビルトインされているとし、「それを守り生かそうとしないとスルガ銀行のようになり、リスク世界への異常な突入やお上依存の指定金融機関の罠にはまってしまう」と述べた。
(写真、『北海道における地域産業のイノベーションと地域金融機関の役割』をテーマに行われたパネルディスカッション)
続いて日本政策投資銀行北海道支店長の松嶋一重氏がコーディネーターになってパネルディスカッションが行われた。パネリストは、ソメスサドル(本社・歌志内市)社長の染谷昇氏、北洋銀行(本店・札幌市中央区)常務執行役員の塚見孝成氏、道副知事の辻泰弘氏、濱田氏、室蘭信用金庫(本店・室蘭市)理事長の山田隆秀氏。
染谷氏は、リーマンショックで革製品の販売が止まり厳しい状況に陥った際、北門信金(本店・滝川市)と一緒に経営改善計画を立て、1期だけの大赤字で済んだことを報告。塚見氏は、2009年から地域産業支援部を設立、食、観光、ものづくり分野の支援を通じた地域産業の活性化について紹介、「販路拡大支援は現在までに道内中小企業の3%強にあたる約5000社、ファンドを通じた企業育成支援は51社、10億円の実績になった」と話した。
また、山田氏は、「室蘭は2大鉄鋼メーカーに依存する中小企業の体質があったが、室蘭工業大学の水素関連産業の技術開発などもあって大企業依存からの脱却が活発化している。当金庫は地域のオルガナイザー(まとめ役)を目指していく」と話していた。