道内23信用金庫の2011年3月期決算は、純損益で赤字の信金はゼロになり減収増益で全信金が黒字になる見込みだ。各信金は5月末までに決算を取りまとめ、6月の総代会でそれぞれ公表する。(写真は稚内信金本店。写真と本文は直接関係ありません)

 

 2011年3月期は、金融円滑化法と緊急保証によって、融資先企業の倒産が減少。この結果、信金にとって大きな負担になる信用コストの積み増しが少なくなり収益面で改善している。

 

 また、東日本大震災によって当初予定されていた法人税5%下げなど一連の法人税改正が棚上げされることになったため、プラス効果も出ている。

 

 と、いうのも法人税の5%下げに伴って繰延税金資産の5%取り崩しも必要になり減益要因になると見られていたからだ。

 

 繰延税金資産は、将来貸倒れが発生したり債権回収ができたときなどに回収される資産として計上しているもので、法人税と連動している。このため、法人税が下がれば繰延税金資産を取り崩さなければならず、減益要因とされていた。

 

 道内23信金では、法人税の5%下げに伴って繰延税金資産を全体で20数億円取り崩さなければならないと想定していたが、法人税改正の棚上げによってこの20数億円がプラス要因になって当期純利益を想定よりも押し上げることになった。

 

 こうした増益要因はあるものの、本業の貸出金が減少傾向を続け、2011年3月期の預貸率は46%程度まで落ち込んだ模様。

 

 貸出先が増えないうえに貸出金利息収入は、上位業態である銀行との金利競争が激しく預金金利との利ざやは年々薄くなっている。

 

 道内信金は、09年3月期に過去最多の8信金が赤字で10年3月期は、伊達と函館の2信金が赤字だった。11年3月期は全信金が黒字化するが、本業での利益の希薄化トレンドは続いている。

 

 12年3月期には、東日本大震災の影響が出てくるうえ、金融円滑化法の延長に伴って信用コストの積み増しも必要になってくる局面も出てきそうで減益要素が増えてくる見通しだ。

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