IMG_1335「中小企業の海外進出に向けて地域金融機関に求められる役割とは何か」――このことをテーマにパネルディスカッションが行われた北海道財務局主催の「平成25年度地域密着型金融に関するシンポジウム」。パネリストの1人として議論に加わったのが北洋銀行常務執行役員の迫田(さこだ)敏高氏(58)。昨年6月、日銀政策委員会秘書役から北洋入りした迫田氏は“華麗なる経歴”を封印するようにこの1年間は対外的に沈黙を保った。14日に開催されたシンポジウムには道内信金など金融関係者約200人が参加しており、迫田氏の金融界デビューとなったようだ。(写真は、パネル討論で発言する迫田氏)
 
 迫田氏は、1956年広島県生まれ。早大政経卒後の80年に日銀入行。その後2002年6月に高知支店長、06年1月広島支店長、08年7月金融機構局審議役を経て11年5月政策委員会室秘書役に就任。政策委員会は日銀の最高意思決定機関。そこの秘書役だったということは、当時の白川方明前総裁の側近だったことがわかる。その白川氏から昨年3月中旬、金融緩和論者の現職黒田東彦総裁に交代。「白から黒」に代わったことで迫田氏は昨年5月1日付で総務人事局付に異動、同月10日付で日銀を退職した。そしてそれからわずか5日後の15日に北洋銀行の3月期決算発表とともに6月の株主総会後に国際部と資金証券部を担当する常務執行役員として迎え入れられることが公にされた。
 
 前置きはこのくらいにして、シンポジウムで迫田氏はどんな発言をしたのか。
 
「北海道の企業は、海外36ヵ国・地域に210社が進出し229拠点を有している。九州・山口地域の海外進出企業1200社強に比べて6分の1だが、九州・山口地域には70万社がある。道内26万社の比率から見て道内企業の海外進出は今後も増えていくだろう」
 
「今年1月、北洋銀行はタイ・バンコクに事務所を立ち上げたが、ここはオール北海道の体制でビジネスをASEANに広げる活動拠点。北海道のブランド価値は高く、6億人のASEANは魅力あるマーケット」
 
「海外進出を志向する中小企業の個別ニーズに対応できる体制を組んでいかなければならない。北洋銀行の行員数は約3600人で海外経験を積んだ国際部行員は約60人。少ない人数を補強する意味でも外部機関との連携は不可欠だ」
 
 さらにこんな注目すべき発言も行った。
「海外展開はゼロサムではなくてプラスサム。北洋銀行の取引先でなくても一緒に出て行く工夫が必要。道内の金融機関が手を取り合って道内企業を海外に売り出していくことが北海道の発展に繋がり、我々地域金融機関の発展にも結び付く」
 
 この迫田氏の発言について、パネリストの1人である西日本シティ銀行谷川浩道副頭取は賛同、「個々の信金が自分たちだけで取引先の海外進出をサポートしていくには限界がある。北海道の地域金融機関がみんなで手を組んでいくのは良いアイデアだ。そういう方向が良いのではないか」と後押しした。
 
 北洋銀行の日銀出身者は副頭取、頭取を経験した横内龍三現会長(69)が03年6月に58歳で当時の札幌北洋ホールディングス監査役に就任して以来、10年ぶり。目下、迫田氏は21人いる執行役員の中で序列から言えば上から5番目の位置にいる。今回のシンポジウム出演で道内金融界にデビューした迫田氏、果たして今度の役員改選で12人いる常勤取締役の一角に入るのかどうか、注目されている。


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