道は20日、知的財産を活かした地域潜在力の発掘を目指した「元気創出フォーラム」を札幌プリンスホテル国際館パミールで開催した。道が今年度創設した「北海道科学技術奨励賞」の受賞者5人が研究の概要を発表したほか、知財戦略を活用した地域ブランド形成の取り組み事例などが報告された。フォーラムには、約200人が参加した。(写真左は道総研林産試験場の大橋義徳氏、写真右は帯広川西農協の常田馨氏)
フォーラムでは、最初に2013年度の道科学技術奨励賞を受賞した研究者5人が概要報告。道産のカラマツを使用した人工林材で木質I形梁や大断面組立梁、単板集成材を開発した道立総合研究機構森林研究本部・林産試験場研究主任の大橋義徳氏や牛白血病の新規制御法を開発した北大大学院獣医学研究科准教授の今内覚氏、渡海構造物として水中浮遊式トンネルなどの可能性を示した北大大学院工学研究院准教授の佐藤太裕氏、尿の流速などを簡便に測定できる新規尿流測定装置を開発した旭川医大腎泌尿器外科学講座講師の松本成史氏、不安や恐怖記憶を調節する新たな脳内メカニズムを発見した北大大学院医学研究科助教の吉田隆行氏がそれぞれ研究の意義や可能性について言及した。
続いて行われた知財戦略を活用した地域ブランド形成の事例発表では、『十勝川西長いも』の地域団体商標で先行している帯広川西農業協同組合青果部長の常田馨氏が講演。常田氏は、「地域団体商標を2006年に取得したが、商標を取ったと言っても高い値段が付くわけではない。ただ意外な効果があったのは、東日本大震災での風評被害から免れたこと。国が認めた産地証明が台湾向け輸出などで影響を受けなかった」と意図しないところで効力を発揮したことを強調した。
十勝川西長いも選果場は、選果場としては世界でも初のSGSのHACCP認証を取得しているが、「このHACCP認証取得が米国向け輸出の追い風になっている。米国輸出で競合する中国産長いもに比べて価格は3倍もするが、米国西海岸で30数店展開しているタワースーパーでチャイニーズ向けに倍々で伸びている」と語り、地域団体商標にプラスしてHACCP認証を取得した相乗効果が出ていることを示した。
フォーラムでは、別会場で「北海道コーディネータ・ネットワーク・フォーラム」も行われ、北海道情報大学経営情報学部准教授の金間大介氏が「モチベーションの科学~研究者・技術者のやる気はどこから来るのか?~」をテーマに講演するなどした。