企業や団体、行政のトップの発言は、組織の方向性を示したり問題点を提起するなど、“今”を凝縮して投げ掛けられる。それを受け止める組織人や関係する人たちは、トップの発言を時に素直に受け止め、時にその裏の真意を忖度しようとする。風の強弱によって稲穂がそよいだり波打ったりするように、トップの発言は社会や関係する各界に、さざ波や荒波を引き起こす。2014年1月のトップたちの発言を点描してみよう。(写真は左から大見英明理事長、福原郁治社長、土屋公三会長)
『組合員が150万人になったらコープさっぽろの旗艦店であるルーシー店の屋上から花火を20発打ち上げたい』
コープさっぽろの大見英明理事長からこの発言が飛び出したのは、1月10日に札幌コンベンションセンターで行われたコープさっぽろの取引先で作る生協会新春学習会でのこと。食品メーカーや卸会社など1500人以上が集まる中で、大見理事長は生協組合員が順調に増えていることに言及したとき、晴れ晴れとした表情で語った言葉だ。これまで組合員加入の条件だった出資金の下限を昨年4月から1000円に引き下げた(以前は5000円)ことで組合員は大幅に増え、今年3月末で150万人達成がほぼ確実になった。大見理事長は、花火の打ち上げとともに感謝デーとして割引セールの実施も示唆した。
『当社はイワシなのにナマズと勘違いしていた。我々はイワシでありチャレンジー。闘志を持って戦っていきピンチをチャンスに変える』
アークス傘下の福原の福原郁治社長が、こう発言したのは1月7日に札幌パークホテルで開かれたアークスグループの新年名刺交換会。こちらも取引先から1500以上が集まった中での言葉だ。アークスの原点となったラルズと福原の経営統合から12年、午年がひと回りした今年の福原イズムとして掲げたスローガンだ。福原氏の発言の裏には昨年、地盤の帯広・十勝でライバル2社が相次いでセブン&アイ・ホールディングスとイオンの傘下に入ったことによる危機感があるからだ。イワシとナマズの例えは、アークス横山清社長の十八番。弱くてすぐに死んでしまうイワシも怖いナマズと一緒の水槽にいれば緊張感を持ち、長生きすることを企業の消長に例えたもの。
福原社長は、アークス結成前はイワシを自認していたのにいつの間にかナマズと勘違いしてしまっていたと自戒、マンモスナマズの子分たちが帯広・十勝にやってきたことを契機に再びにイワシになることを宣言したものだ。
『経営者の三法は、嘘言わない、隠さない、ごまかさない』
土屋ホールディングスの土屋公三会長が1月10日にホテルライフォート札幌で行われた北海道師範塾「教師の道」冬季講座のゲストとして講演した中での発言。現役の教師や教師を目指す学生たち約60人を前に、リーダーと社会人の人間学をテーマに語り、漢の劉邦の三法である「殺さない、傷つけない、盗まない」になぞらえて現在の経営者が守るべき三法として訴えた。
土屋氏は、20世紀はモノの時代で「“モノ”サシ」で図ることのできる時代だったが、21世紀はココロの時代であり、「“ココロ”ザシ」が大切な時代になったと参加者たちに訴えかけ、学校教育でも算数や国語、経営と言ったその時に必要な“時務学”だけでなく、人間学の重視が望まれると語りかけた。