10年ぶりに『ブラタモリ』(NHK総合)が紹介し、三谷幸喜さん演出、大泉洋さん、宮沢りえさん出演の舞台『昭和から騒ぎ』の千秋楽が開催され、新造船の飛鳥Ⅲが初寄港するなど、ブランド力が一段と高まっている函館市。全国系飲食チェーンの進出も相次いでいるが、地場の飲食業界は、これまでの排除から共生へと視線が変化しているという。(写真は、「つきじ喜代村すしざんまい マグロ大王の店」)
函館の飲食業界といえば、「ラッキーピエロ」に代表されるように地元勢が強く、帯広と並んでいわゆる“モンロー主義”が底流にある。コンビニエンスストアでも「ハセガワストア」が地元に浸透、観光客もそういった尖った地元店を好む傾向が強い。ところが、最近、全国系飲食チェーンが相次いで函館に進出してきた。「すしざんまい」や「松屋・松のや」「サイゼリヤ」「ゆで太郎・もつ次郎」などがすでに進出、「丸源ラーメン」も出店を予定している。中でも、「すしざんまい」は、函館観光地の中心地とも言える「函館朝市」に2025年6月20日に出店、地元飲食業界にとっては、衝撃のデビューだった。当然、朝市関係者には反発が生まれたが、1ヵ月が経過して、変化が出てきたという。
地元飲食店の社長は、「“すしざんまい”が来たことで、影響を懸念する声も強かったが、蓋を開けてみたら朝市に新たな客層が増え、ウィンウィンの相乗効果が出ている。全国系の出店で、逆に函館ブランドに磨きがかかっており、これまでの排除の姿勢が変化しているようだ」と話す。
飲食店オーナーの世代交代も、こうした流れを強めている。「函館の良き時代を知っているバブル世代の経営者から、30代、40代の若手経営者に交代する時期に差し掛かっている。彼らは現実を見ており、外資(函館以外の資本)とも共生の道を探ろうしている」(地元金融関係者)。さらに、「函館の地主は土地を売らない」という定説が、こちらも地主の世代交代で、土地流動化が見込めるようになってきたという。世代交代といううねりの中、全国系ブランド共生の風土を模索し、函館ブランドに磨きをかけようという意識が強まっているようだ。