札幌証券取引所は、ESG債(環境・社会・ガバナンスに資するプロジェクトに係る資金調達を目的とする債券)に特化した上場市場として、「北海道ESGプロボンドマーケット」を国内で初開設する。このため、2025年6月20日から同年7月20日までパブリックコメントを実施。その後、金融庁などとの調整が整えば、2025年秋をめどにプロ投資家(機関投資家)向け市場としてスタートする。(写真は、「北海道ESGプロボンドマーケット」について会見する札証・長野実理事長=2025年6月20日、札証にて)
「北海道ESGプロボンドマーケット」の開設は、北海道の再生可能エネルギーのポテンシャルを最大限に活用し、資金、人材、情報を北海道・札幌に集積させる「アジア・世界の金融センター」を目指すために、Team Sapporo-Hokkaidoが進めている北海道・札幌GX金融・資産運用特区の取り組みの一環。
債券上場市場は、既に東京証券取引所が「東京プロボンドマーケット」を開設しているが、札証は、ESG債に特化したプロ投資家向け市場を開設して、国内外のESG投資を北海道に呼び込む。上場できるのは、①第三者評価機関によるESG評価取得②格付け機関の格付け取得③主幹事証券が就いていることーーの3要件で、対象証券は、事業債や地方債。道内で言えば、北海道電力債や北海道ガス債、北海道債や札幌市債などがこれに当たる。また、信託受益権と特定社債も対象とする。北海道だけでなく、全国からの上場が可能。売買単位は1億円以上で、1億円単位。
この市場の開設によって、債券発行者側にとっては、ESGに係る取り組みを内外に発信でき、より幅広い投資家の接点を持つことが可能になる。投資家サイドにとっては、投資するESG債の選択肢が広がり、より活発な投資活動が可能になる。将来的に、ESGに関する海外の機関投資家が、札証を通じて投資することも可能になる。
札証と海外取引所との連携も想定しており、「新しい債券市場の創設は、国際金融センターに成長していく拡張性が期待できる。今回の取り組みは、その第一歩」(札証・長野実理事長)とした。
ESG債の2024年度発行実績は、地方債54件、49億円、事業債256件、4・5兆円。ESG債の発行は底堅いものの、金利情勢に左右されるため、金利上昇時には、発行が見送られるケースもある。道内での累計発行実績は、札幌市が2件、120億円、北海道電力が7銘柄、895億円などで、いずれも第三者認証を取得している。
札証にESG債を上場することによって、「グリーンウォッシュ」(実際には環境に配慮していないのに、環境に優しい企業であるかのように見せかける行為や環境配慮を過大にアピールするマーケティング手法)ではないことが証明され、発行体にとっては、国内外にPRできて有利になる。Team Sapporo Hokkaidoでは、GX事業に係る資金調達のグリーン性・地域社会への貢献を評価する認証制度や、北海道のGX投資関連情報を国内外に発信する情報プラットフォームの運用も準備している。