北海道で酒米の王様「山田錦」の栽培に成功!道内6酒蔵の試験醸造酒を一般販売

経済総合

 寒冷地の北海道で栽培することは不可能とされてきた、酒米の王様「山田錦」。芦別市の有限会社加藤農場は、北海道銀行アグリビジネス推進室と組み、2016年から北海道産「山田錦」の栽培に挑戦する「道銀・酒米プロジェクト」をスタート。それから6年、2021年産「山田錦」を使った日本酒が道内酒蔵6社で試験醸造され、このほど一般販売されることになった。(写真は、「道銀・酒米プロジェクト」で生まれた道産「山田錦」を使った試験醸造酒のお披露目会=2022年7月28日道銀本店ビル6階、道銀提供)

「山田錦」は酒米の王様と呼ばれる酒造好適米の代表品種。1936年に兵庫県立農事試験場で生まれた品種で、「獺祭」や「白鶴」のほか全国の多くの酒蔵で使用されている。酒造好適米の2021年度全国生産量は約7万4000tで、そのうち「山田錦」は2万7000tと36%を占め、単独銘柄としては最も多い。生産地は、兵庫県が55%を占め、岡山県、山口県などが続く。公表されている栽培地の北限は新潟県上越市。

 道銀は、北海道の基幹産業である農業を支援する専門部署として「アグリビジネス推進室」を2009年6月に設置。「道銀・農業経営塾」を開設するなど農業経営の課題解決に取り組んできた。その経営塾の1期生だった加藤農場の加藤穣代表取締役から「山田錦の栽培にチャレンジしたい」との相談を受け、スタートしたのがこのプロジェクト。
 加藤農場は、芦別市野花南町で250haの大規模水稲専業経営をしており、大半がモチ米の契約栽培。しかし、米消費が減少、酒米を含む加工用に米作りを転換したいという思いがプロジェクトの原点になった。2016年に和歌山県の種苗会社から「山田錦」の種子を購入して、加藤農場の33aで栽培を開始。この年はわずかに籾1・2㎏しか確保できなかったが、翌年の種籾として使用。2017年は2・2㎏、2018年は81㎏、2019年は1140㎏と着実に収穫量が増加。2020年には1400㎏を生産、2021年には1万1400㎏(2022年用種籾分除く)となり、作付面積も150aに増えた。

 プロジェクトでは、北海道酒造組合を通じて2021年産の道産「山田錦」を、小林酒造(夕張郡栗山町)、福司酒造(釧路市)、日本清酒(札幌市中央区)、三千櫻酒造(上川郡東川町)、田中酒造(小樽市)、国稀酒造(増毛郡増毛町)に提供し、本格的な試験醸造を依頼。このほど醸造が完了したことに伴い、6社から道産「山田錦」を使った試験醸造酒が一般販売されることになった。純米大吟醸や大吟醸などで、各酒蔵の販売本数(720ml)は1500本から5000本、価格は税込みで2200円から。「山田錦の旨味を感じる大吟醸」(小林酒造)、「フルーティな香りで軽快な味わい」(国稀酒造)、「ほのかな吟醸香と透明感のあるクリアな味わい」(日本清酒)などがセールスポイントになっている。
 プロジェクトでは、今後も各社による試験醸造を継続するとともに、栽培方式の改善を進め、100%有機栽培も試行する予定。不可能とされた「山田錦」の挑戦から6年、道産日本酒業界に新たな風が吹き始めている。

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