北海道から第2のニトリやアインホールディングスを育てる、北海道の若手経営者を対象にした「北海道経営未来塾」の第7期第1回定例講座が7月12日、札幌市中央区の札幌パークホテル1階テラスルームで開かれた。講師はTBSホールディングス(本社・東京都港区)の武田信二会長で、塾生30数人が聴講した。(写真は、講演するTBSホールディングスの武田信二会長)
武田会長は、「メディアビッグバンとテレビの未来」をテーマに約1時間にわたって講演。武田氏は、生活者のライフスタイルの変化がメディア接触の変化を引き起こしてスマートフォンとの接触時間がテレビを超えていることなど、メディアビッグバンが起こっている現状を紹介。「47都道府県に127局の地上波民放テレビ局があるが、テレビ局の収入である広告が減っていくことが確実となっている。各県に4局あって、北海道は広いため唯一5局あるが、5局が存続していけるのかどうか。コストカットで存続できたとしても限界がある。また、キー局が系列局の経営維持に支援できるかというと、例えばTBSHDは上場しており、株主から支援の理解が得られないかもしれない。地上波テレビ局はもがき始めており、新しいことに取り組まないと今までになかった免許返上のテレビ局がいつか出てくるのではないか」と見通しを語った。
急速に広がっている動画配信サービスについて、「私たちはネットフリックスを甘く見ていたところもあった。彼らが“能力密度”と呼ぶ優秀な人材獲得の方法は半端ではない。彼らに対抗するのではなく、ネットフリックスを使おうという路線に切り替えている。TBSは、メディア企業からコンテンツ企業になることで未来を切り開こうとしている」と述べた上で、「テレビで放送しないドラマやバラエティをネットフリックスで独占配信することも考えている」とした。
手始めに行ったのがドラマ『日本沈没-希望のひと-』の配信で、目指すのは「IPドリブン」(知的財産を起点にした企業)だとして、デジタル、体験、海外の3領域の事業を拡大すると強調。「総額300億円以上のコンテンツ制作予算を準備して5年以内に世界的なヒットを3~4本つくるほか、2022年7月からTBS赤坂ACTシアターで開始したハリーポッターのロングラン公演のような体験価値提供で、2030年に地上波4割、それ以外の売り上げ6割を目指す」と述べた。武田氏、「変化のスピードは早く、実際にそうなるかは分からないが、2030年の目標をイメージして逆算して中期計画をつくっている。しかし、2022年3月期決算は営業利益率5・68%と中計の目標5%を超えてしまった。このため中計最終年度の2023年度は、営業利益率6・67%に引き上げた」と経営計画づくりの難しさも指摘していた。