北海道中小企業家同友会は15日、「中小企業憲章」が閣議決定されて2年目を迎えることから「制定2周年記念セミナー」をホテルポールスター札幌で開催した。中小企業への国のスタンスを明確にしたこの憲章を道内各地域に普及させ、各自治体でこの憲章の精神を盛り込んだ中小企業振興基本条例の制定を働きかけて地域社会と中小企業の密接な関係を構築するのが狙い。道内各地の同友会支部から約160人が参加した。(写真は、「中小企業憲章を支える中小企業振興基本条例を学ぶ」をテーマに行われたパネルディスカッション)
 
 中小企業憲章は、国が2010年6月に閣議決定したもので《中小企業は経済を牽引する力であり社会の主役。常に時代の先駆けとして積極果敢に挑戦を続け、多くの難局に遭ってもこれを乗り越えてきた:》と明記している。中小企業の発展がなければ国の発展も有り得ないことを政府が意思表明した憲章で、これに基づいた各種の政策支援メニューが施行されている。
 
 パネルディスカッションで中小企業庁事業環境部企画課長の間宮淑夫氏は、「01年ころまでは国は中小企業を弱者と見て助けるという発想だったが、中小企業基本法の改正で頑張る中小企業をサポートする発想に変えた。10年の憲章は政府の決定として最も重い閣議決定がなされ明確に中小企業を国の発展欠かせない原動力と位置づけた。応援サポート体制にしっかり取り組んでいく」と語った。
 
 慶応大学教授の植田浩史氏は、憲章の精神を盛り込んだ中小企業振興基本条例が憲章制定後に全国的な広がりを見せていることを紹介、「地域経済の疲弊で自治体側の問題意識は高まっており、地域に根ざした中小企業支援の必要性が条例制定を後押ししている」と述べた。ただ、「条例は理念を示したものであり、地域で何を変えていくかを考えることが大切」と訴えた。
 
 09年4月に中小企業振興基本条例を制定した釧路市の産業振興部次長、高木亨氏は、「当時の釧路公立大小磯修二学長の唱えていた産消協働の考え方を取り込んで域内循環で地域を考えた仕入れや消費を積極化することを啓発する条例を制定した」と説明した。
 
 また、同友会別海地区会幹事長の山口寿氏(別海でセイコーマートなどを営む富田屋社長)は、「別海は酪農の町だが、卸・小売りなど中小企業は雇用も多く地域を支えているが、行政と商工業者にはお互いに壁があった。中小企業振興基本条例はこの壁を取り除き、医療問題についての政策提言も行える環境ができた。行政と中小企業の距離感は短くなっている」と09年4月に同町で制定された条例の成果をアピールしていた。
 
 道内の中小企業振興基本条例は、07年4月に施行された帯広市が最も早く、道や札幌市、下川町が続き現在は12自治体で制定されている。条例制定に向けた動きは、北見市や根室市、登別市など8自治体。
 
 道中小企業家同友会代表理事の守和彦氏(ダテハキ会長)は、「中小企業に自信と活力をもたらし、持続可能な地域社会を作るためにも道内の全市町村で条例制定を目指したい」と結んだ。


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