札幌証券取引所は27日、新株予約権を取引所で売買するライツ・イシューのセミナーを開いた。講師は元日興証券勤務で現在、証券業務コンサルティングを行っている資本市場研究所きずなの渡辺雅之代表取締役。渡辺氏は、「日本の発行市場は制度疲労を起こしている。ライツ・イシューを基点に発行市場が変わっていくきっかけになるのではないか」と2012年4月からの制度改正でライツ・イシューの利便性が高まり発行・流通市場の活性化に繋がる見通しを示した。(写真は、講演する渡辺雅之氏)
 
 ライツ・イシューは、既存株主に割り当てられたライツ(新株予約権)を証券取引所で株主が投資家に売買するもので、公募増資などと違い既存株主の持ち分を希薄化せずに増資できる制度。
 
 現状では発行企業体や投資家にとって使い勝手が悪いため利用が進んでいないが、12年4月から金融庁は制度改正を行ってより使い勝手の良い増資手法に改める。
 
 渡辺氏は、「企業の公募増資、第三者割当増資などのファイナンス手法は、大幅な株価下落や既存株主の持ち分希薄化で投資家にとって売り材料でしかない。ライツ・イシューは既存株主に優しいファイナンス手法だ」と強調、制度疲労を起こしている市場が変わっていくきっかけになる可能性があることを示した。
 
 国内で初めてのライツ・イシューは10年3月のタカラレーベン。8000人強の株主にライツが割り当てられて、そのライツは東証に上場され売買された。市場で売買されたライツは1~2割で他のライツは既存株主がそのまま払い込んだが、タカラレーベンは47億5000万円の資金調達を行うことができた。未行使で失権したライツは全体の4・3%。
 
 渡辺氏は、「企業側はライツ・イシューできちんと資金調達できるのかという不安があるが、タカラレーベンの失権は4・3%で目標としていた50億円をほぼ実現できた。現状ではライツの権利行使について既存株主や投資家がどうしたらいいのかわからない思いがある。ライツ権利行使のアドバイスが明確な定めによって後押しできるようになれば企業や株主のメリットは大きくなる」と説明した。
 
 ファイナンスが市場の売り材料にならない手法としてライツ・イシューに期待がかかっている。
 
 このセミナーには小池善明札証理事長も参加、小池氏は「札証では3年前に設置した資本市場会議でライツ・イシューを取り上げて議論している。使い勝手が良くなればファイナンスの良い手法になる。是非広げていきたい」と札証への導入意欲を見せていた。


この記事は参考になりましたか?