札幌の老舗書店「なにわ書房」、70年間の経営に終止符

経済総合

 1950年創業の札幌の老舗書店「なにわ書房」(札幌市中央区)が21日、札幌地裁に自己破産を申請した。負債総額は約2億9000万円。札幌近郊の書店破産は、5月の「喜久屋書店BOOK JAM K&S」(千歳市)に続くもの。(写真は、白いシートで覆われている「なにわ書房 東光ストア行啓通店」)

「なにわ書房」と言えば、札幌市中央区の地下鉄大通駅近くの日之出ビル地下1階と地下2階で40数年営業を続けてきた「リーブルなにわ」を思い出す市民も多いだろう。同社の旗艦店であった同店が閉店したのは2013年4月。その店舗は文教堂ホールディングス(川崎市)が「札幌大通駅店」として承継したが、「なにわ書房」の苦境はその当時からすでに始まっていた。

 こんなエピソードがある。1960年代後半、「なにわ書房」の初代・浪花社長と中小企業の経済団体である北海道中小企業家同友会の初代事務局長、故大久保尚孝氏(後に専務理事)との出会いは同友会関係者の間で伝説的に語り継がれている。大久保氏は、神奈川県藤沢市生まれで藤沢商業学校を卒業後に帝国銀行(第一銀行)に入行。札幌支店勤務だった60年代後半に「なにわ書房」初代社長に強く請われ第一銀行を退職、70年4月に発足間もない北海道同友会の初代事務局長に転じた。

 大久保氏は中小企業家同友会の基礎をつくった人物で、札幌、北海道の中小企業の発展に大きな役割を果たした。「なにわ書房」初代社長はその同友会創設のキーマンで、当時の書店経営者が経済界活動にも強くかかわっていたことがうかがわれる。

 ともあれ、「リーブルなにわ」閉店後は、東光ストア円山店や行啓通店、北広島店などスーパーマーケット内に書店を出し、15年にはブックカフェ「ライナー・ノーツ」を展開するなど新機軸を打ち出そうとしたが電子書籍やネット通販の普及スピードに太刀打ちできず、このほど自己破産申請に至った。
 書店経営では5月にコープさっぽろの7店舗に入っていた「喜久屋書店BOOK JAM K&S」が負債総額2億4000万円で自己破産している。

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