洋菓子製造・販売のきのとや(本社・札幌市白石区)は、昨年11月に有限会社「きのとやユートピアファーム」を設立、日高管内の養鶏業と酪農業を承継した。いずれも家族経営で、後継者がいないことなどから承継したもの。きのとやの長沼昭夫会長(71)は、「北海道の酪農業と養鶏業の家族経営のモデルファームにしたい」と話している。
(写真は、きのとやユートピアファームの日高町豊郷酪農事業部=上と新冠町大狩部養鶏事業部。きのとや提供)
長沼会長は、1972年北海道大学水産学部を卒業後、北大山スキー部の先輩たちが経営していた日髙管内新冠町の農業法人「新冠ユートピア牧場」に就職。養鶏とホルスタインの子牛を育成する牡犢(ぼとく)を行っていたが、オイルショックで赤字に陥り長沼会長は4年間で退職。その後、ダイエー勤務などを経て、きのとやを設立した経緯がある。
新冠ユートピア牧場は人手に渡ったが、同牧場代表者の1人が同町大狩部で養鶏業を継続。一昨年11月、養鶏業の継続が難しいとして旧知の長沼会長に相談。長沼会長は、きのとやの洋菓子製造に使えることや、一度は挫折した農業経営に再度挑戦したいという思いから承継を決めた。
また、酪農業は昨年11月、JA門別から日高町豊郷の離農酪農家の事業承継について紹介を受け、引き受けることにしたもので、酪農業参入を機に「きのとやユートピアファーム」を設立した。
新冠町大狩部養鶏事業部では現在、平飼いの鶏3500羽を飼育しているが近く6000羽に増やす。卵は「ユートピアの美味しい卵」の商品名で、きのとやが買い取るほか外販も行う。日高町豊郷酪農事業部では、現在乳牛40頭と育成牛30頭がおり、こちらの生乳は外販とともに近く牛乳製造まで手掛け、きのとやが買い入れる。
長沼会長は、「酪農は大規模なメガファーム化が進んでいるが、当社が目指すのは家族経営で成り立つ酪農業。年収1000~1500万円の収入が得られる持続可能な家族経営モデルを確立する。牛を飼う喜びを感じ取れる酪農を根付かせ新規就農を後押ししたい」と話す。また、養鶏業についても家族経営モデルの構築を進めて将来的には平飼い養鶏のフランチャイズ展開も視野に入れる。
きのとやでは、今年秋に札幌市内に3店舗目の路面店を新規オープンさせ、「きのとやユートピアファーム」の卵や牛乳など農産品販売コーナーも併設する。新店舗建設と農業事業の設備投資に約5億円を投じる。