北海道の科学技術振興を先導するノーステック財団が26日、北大学術交流会館で設立10周年の記念講演会を開催した。財団の近藤龍夫理事長が「当財団は、北海道が激動の大競争時代を勝ち残るための強みを持てるように、研究開発と協働の力を育む目的で設立された。10年の節目を迎えたが、さらに20周年に向けて考え行動する“考動”を原点に産業クラスター形成に重点を置く」と挨拶。
 続いて小惑星探査機『はやぶさ』で脚光を浴びている川口淳一郎・独立行政法人宇宙航空研究開発機構プログラムディレクタが記念講演、独創技術の大切さを訴えた。(写真は、挨拶する近藤龍夫ノーステック財団理事長)
 
 ノーステック財団は、2001年7月に北海道地域技術振興センターと北海道科学・産業技術振興財団が統合して設立された。研究開発から実用化・事業化まで一貫した支援体制や産官学連携によって北海道の産業振興と地域経済の発展を進めるのが事業目的。
 
 研究開発助成では、10年間で1865人の研究者に助成したほか科学技術振興に140億円を投じてきた。
 
 近藤理事長は、「今年4月には公益財団法人に移行したが、今後10年間の中長期プランとして“2020プラン”を策定、食・観光・環境の3つを柱に当財団の繋ぐ機能とネットワークの活用で産業クラスター形成を進めていきたい」と語った。
 
 10周年の功労者表彰には、キリンビールの木村良臣元副社長、アミノアップ化学の小菅定雄会長、小林経営研究所の小林好佐所長の3人が選ばれた。
 
 木村氏は、「財団の設立当初、初代理事長の戸田一夫さんが語った言葉が胸に刻まれている。戸田さんは『10年偉大なり、20年恐るべし、30年歴史なる』と語っていた。簡単に諦めず愚直に進んでいく心意気を表した言葉だが、道民や技術者に対する強いメッセージが込められていた。10年間少しはお役に立てたのかなと嬉しく思っている」と受賞の喜びを語っていた。
 
 記念講演では、小惑星探査機『はやぶさ』のプロジェクトマネージャーを務めた川口氏が、独創技術の大切さを強調。「構想から26年、火星や金星のような丸い天体では米国に敵わないから小さな丸くない天体に着目してサンプルを地上に持ち帰るミッションを考えた」と述べる一方で、「漢字の隼は、探査機『はやぶさ』の形状に非常に良く似ている。まるで探査機『はやぶさ』のために作られたような漢字だ」と会場を笑わせる一幕もあった。
 
 川口氏は、版画家棟方志功の言葉を紹介、「師匠に就いたら師匠を超えられない、ゴッホも我流だったからあそこまで行った。志功は武者小路実篤の『この道より我を生かす道なし、この道を行く』という言葉が好きだったが、まさに我々もこの言葉に励まされてプロジェクトを進めて行った」と研究哲学の一端を披露していた。



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