日経「景気討論会」開催、大地震で北海道経済はどうなる

経済総合

 日本経済新聞社と日本経済研究センターは18日、札幌市中央区のニューオータニイン札幌で「景気討論会」を開催した。パネリストとして参加したのは、北海道銀行頭取の笹原晶博氏、コープさっぽろ理事長の大見英明氏のほか三井住友信託銀行調査部経済調査チーム長の花田普氏、日本経済研究センター主任研究員の西岡慎一氏の4人。討論会のテーマは、当初の予定から変わり北海道胆振東部地震による地域経済への影響や北海道経済の行方に絞られた。道内の出席者2人の発言を抜粋した。(写真は、ニューオータニイン札幌で開催された「景気討論会」)

 道銀頭取・笹原氏
「胆振東部地震と全道停電による大きな被害が、観光産業を襲っている。震災によるキャンセルは90万人、損失額は300億円と言われ、例年の9月の4分の1の消費が吹っ飛んだことになる。風評被害をいかに止めるかが課題だ。卸・小売業では、在庫廃棄もしており、こうした業種に対して金融機関としてできるところからしっかりお手伝いしたい」

「震災による直接被害は局所的だが、全道停電の影響が大きい。全道民、全企業に影響を及ぼした。(北海道電力には)安定した電力供給をしっかり構築してもらいたい」

「今後の課題は、北海道の中心産業である観光に影響を及ぼしている風評を早く払拭していくこと。『観光地は元気だ』、『無事だ』と個人レベルでも発信することが重要。国、道にも期待したい。一方で、震災によって課題も浮かんだ。しっかり情報提供できたか、おもてなしができたかは反省点だ。また、一次産業の生産が滞ると国全体に影響することもわかった。災害に強い一次産業を構築する必要がある」

「地震前まではインバウンドの増加、ホテル建設ラツシュ、旺盛な設備投資などが経済を牽引していた。就労人口は高齢者、女性の参加で増えていたが、北海道全体で見ると所得が増えても消費に回っていない。北海道はエネルギーコストが高く、可処分所得は減っている可能性がある。高齢者の生活防衛の流れはより強まっており、当行の高齢者の個人預金は2~3%と他の世代よりも高い伸びを示している」

「人手不足対応が北海道にとって最大の課題。札幌もそうだが、地方は切実な問題になっている。農業、漁業、食品製造業などの現場では、ひと昔前の年配女性のパートは外国人技能実習生にほとんど置き換わっている。それでも現状ではまだまだ人手が足りない。政府は、地方に焦点を当てた人材確保策を真剣に考えるべきだ」

「4年前、地方創生が声高に唱えられ、各自治体は地方創生戦略を策定した。政府のあの意気込みはどこに行ってしまったのか。未だに東京一極集中を防ぐ政策がほとんどできていないことは不満だ」

「日銀の金融緩和政策によるゆがみが蓄積している。これによって国の財政規律が緩む懸念がある。来年の消費増税は景気に水を差すことになって痛みが伴うと思うが、やるべきだ。政府は増税分をどう使うかが大事だ」

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