札幌証券取引所は25日に開いた第81回定時会員総会で、決算の承認と共に伊藤義郎理事長(84)が退任し、会員外理事の小池善明氏(65、JR北海道グループの北海道キヨスク社長、北海道ジェイアール商事会長)が理事長に正式に選任された。小池氏はで5代目理事長として札証の舵取りを担うことになる。証券取引所の統合・合併が進む中で、札証の存在意義をどう打ち出していくか、小池新理事長の手腕に期待がかかる。(写真は小池新理事長=中央、伊藤前理事長=左)
定時会員総会後に行われた新旧理事長の会見の要旨は以下の通り。
伊藤義郎前理事長
「21年間の理事長在任の間に、札証はやっていけないのではないかという意見もあった。しかし、札証は北海道の経済機能として欠かせない。北海道経済の落ち込みや孤立化、経済が未熟という環境にあって取引所が支えになっている。札証は北海道経済のインフラであり、今後も継続して存続しなければならないと思う。それだけの中身があるのかという批判もあるが、中身を充実させて存続すべきだ」
「在任中に3つの出来事が強く印象に残っている。ひとつは平成13~16年に亘って欠損が出たことだ。中でも15年は3000万円の欠損を計上し、これでやっていけるのかと大変なショックを受けた」
「当時は、新潟や広島、京都の証取が閉鎖し東京や大阪に集中していった時期。それだけに札証の累積損失1億数千万は厳しいものだった。幸い先輩諸氏の奮闘によって剰余金があったため、財務上の引き当てをして切り抜け今は健全な体制にある」
「二つ目は同18年に金融庁の改善命令を受けたこと。経費節減で縮小財政の中で管理運営の不備を指摘されたもので、人員、株式取引、審査に厳正な体制を敷いた。バックアップ体制が不十分という指摘も受け、設備を整えて3年後に改善命令の終了した」
「三つ目は、同13年にアンビシャス市場を立ち上げたこと。中小企業の上場の場を設けることで投資家が地元企業に投資でき、身近にできるようになったのは喜びだ」
小池善明新理事長
「全国の中でも札証は貴重だ。広島、新潟、京都の各証取がなくなり、残された札証を活性化したい」
「北海道は、貯蓄超過の状態で道民のお金を間接金融の金融機関に預金するだけでいいのかという問題がある。地方財政への協力など直接金融が必要になってくる時期が来る。そのためにも札証が存在していなければならない」
「新潟や広島、京都がなぜ統合してなくなったのか、それはそれぞれの地域で身近な証取ではなくなったからだ。札幌まで新幹線が来て、東京まで4時間かからないようになれば、札証が必要なのかという議論になるかも知れないが、現状では一足飛びで道内企業が東証に上場できるのか。北海道に身近な取引所があったほうが良い。北海道から全国の市場に育っていくステップ市場として必要なのではないか」
「金融庁が新興市場の活性化、改革プログラムを挙げているが、札証としても、上場が進まないのは何が負担なのか、審査の問題なのかネックは何かを探り出して制度の手直しをしていきたい」
「IPOセミナーや投資家へのIRセミナーなど道内投資家への情報発信を強化するとともに上場企業を増やして札証を活性化していきたい」
「札証は証券会員制法人で公益団体の色彩が強い。公共性が強く営利を目的にしていないので株式会社の証取とは違う基準で運営していくべきだ」
会員外理事に再任されて同席した横山清アークス社長は、「何でも効率主義で東京に一極集中する問題が今回の東日本大震災で明らかになった。小さくても北海道から世界に向けた入り口が札幌にあることの意義は大きい。小池新理事長は札証の新しい舵取り役として相応しい。米国の専門知識を持っているしMBAの資格もある。今まではその資格を在庫として持っていたかもしれないが、今後は大いにその能力を発揮してトップリーダーとして指導いただけると思う」と語った。
札証の歴代理事長は、初代小竹文次郎氏(昭和25年3月15日~同26年1月5日)、2代寿原外吉氏(同26年2月20日~昭和40年6月16日)、3代今井道雄氏(同40年6月16日~平成2年9月4日)、4代目伊藤義郎氏(同2年9月26日~同23年5月25日)。
小池氏は、商工会議所会頭など経済団体の公職に就いていない初の理事長として、経済界や官公庁、さら道内投資家に向けていかに能動的に働きかけていくか、真価が問われる。
なお、札証の前期決算は、収入1億5589万円、支出1億5631万円で42万円の赤字決算になった。