内閣府、国土交通省、北海道の主催で9日、札幌市白石区の札幌コンベンションセンターで開催された「空港運営戦略フォーラム」。シリーズ2回目は、『成長戦略の観点で見た7空港一体運営への期待』と題して基調講演を行った竹中平蔵氏の発言要旨をお伝えする。(写真は、講演する竹中平蔵氏)
竹中氏(66)は、小泉内閣の経済財政担当大臣、金融担当大臣、総務大臣を歴任し、現在は東洋大学教授。安倍内閣の未来投資会議民間議員、国家戦略特別区域諮問会議有識者議員を務める。以下、発言要旨。
「世界が日本の4つの政策に注目している。法人税率の5%引き下げ、コーポレートガバナンスの強化、国家戦略特区による規制改革、それにコンセッションだ。コンセッションとは、国や自治体に所有権を残したまま運営権を民間に売却すること。そのもっとも大きなプロジェクトとして北海道の7空港民営化がある」
「インフラの運営権を民間に売却するコンセッションは、2016年が大きなポイントの年だった。関西国際空港と伊丹空港、仙台空港でコンセッションが始まったからだ。インフラの運営を民間に任せることがどうして成長戦略に繋がるのか、キーワードは資本のリサイクル。今ある空港や高速道路、上下水道というインフラ資本は、キャッシュフローを生む。資産的価値があるため民間に渡すことによって公的部門に運営権売却によるお金が入る。そのお金を使って公的部門は、新しい政策を行うことができる。それが資本のリサイクルで、財政・資本の効率化が成長戦略として大きな意味を持つ」
「空港の運営を民間に渡すことは、今まで公的部門が取り込んできた仕事を民間に譲り渡すこと。まさにこれは公的部門の民間開放であり民間企業の成長戦略そのものになる」
「欧州やオーストラリアでは、主要な空港の運営は殆ど民間企業が行っている。そういうことが日本では残念ながら行われていなかった。民間が公的インフラを活用することによって新しいアイデアが出てくる。多様な知恵をそこに入れていける。公務員の方々がその分野で一生懸命やっているのは間違いないが、別の視点も入れていく。地域に世界から新しい知恵を入れていくことで、今までと違う活用方法が出てくる」
「海外の民間運営の事例としてこんなケースがある。ある地方空港は土地を持っているので空いた土地にビジネスパークを作ってオフィスを誘致した。オフィスが空港の近くにあると便利なのでオフィスが集積しビジネスパークの収入で空港も潤い、民間利用者も便利になった。また、ある地方空港は近くに大学を誘致した。その大学にシドニーやメルボルンの有力大学から教授が教えに来て、その大学のクオリティがあがり地域活性化の拠点になった。そういうアイデアは空港を今まで運営したことのない人がゼロベースから考えることから出てきたものだ」