札幌市の北4条通を挟んで北大植物園の北側にある伊藤組土建名誉会長・伊藤義郎邸に高層ビルを開発する構想が明らかになって1年、着工に向けた正念場を迎えている。
伊藤邸の敷地は第一種住居地域に指定されており、容積率や建蔽率に加えて高さ制限もあるため、開発には用途地域の見直しが不可欠。札幌市は今年夏に、都市計画の見直し素案をまとめ来春に決定する。果たして、伊藤義郎邸の用途地域見直しが含まれるのかどうか。(写真は、伊藤義郎邸)
札幌市中央区北5西8にある伊藤義郎邸は、敷地面積が約1・2㌶。伊藤氏の居宅として使われていたが、現在伊藤氏は豊平川沿いのマンションに引っ越して生活、伊藤邸に隣接する京王プラザホテル札幌にも1室を借りているとされる。
北大植物園から伊藤邸、北大周辺は第一種住居地域に指定されている。道庁周辺や京プラから東側と北側、それに伊藤邸に隣接する西側はいずれも商業地域で、植物園と北大周辺を橋渡しする形で北5西8の伊藤邸のみが第一種住居地域になっている。
都市計画法による第一種住居地域は、容積率200%、建蔽率60%、高度地区の規定があるところでは高さ33㍍に規制されている。商業地域や再開発地域では容積率が400~700%、建蔽率も80%程度まで認められている。この差は大きく、第一種住居地域では10階建て程度のビルやマンションしか建てられないのが実態。
伊藤邸敷地の実勢価格はどの程度か。建設コンサルタントに概算してもらったところ路線価から見て坪66万円、実勢では50万円と弾いている。路線価はさらに下がっていることから、敷地全体の1・2㌶で10数億円と見ている。
伊藤邸の高層ビル構想には、用途地域を商業地域に変更して、容積率や高さなどの緩和が避けられない。
札幌市は、都市計画区域の見直しを定期的に行っているが、現在は2012年春の都市計画に基づく用途地域見直しに着手。既に昨年の10月から土地利用計画検討部会が6回開催されている。
札幌市は今年夏までに用途地域見直しの素案をまとめる考えで、都市計画審議会がこの素案を審議して来春に決定するスケジュールで進んでいる。これから逆算していくと、今夏までが伊藤邸開発の正念場になることは間違いない。