北大発ベンチャービジネス(VB)、メディカルフォトニクス(札幌市北区)の飯永一也代表取締役(43)は、NPO法人インデペンデンツクラブ(東京都豊島区)が主催した北海道インデペンデンツクラブの事業計画発表会で、採血することなく血中の脂質を測る技術の実用化について講演した。(写真は、講演する飯永一也氏=2017年4月21日午後、札幌証券取引所で)
同社は、北大が開発した技術を事業化するために2015年2月に設立され、現在3期目。この技術は採血することなく血中の脂質を測ることができるため、動脈硬化などの原因とされる食後高脂血症を早期に発見できると期待されている。
食後高脂血症は、見逃されているケースが多いという。食後は血液がどんどん濁ってくる。血液の濁りは将来的に動脈硬化になるリスクを高め、脂肪肝を引き起こして最終的には肝がんに発展する場合もある。食後高脂血症を抑える作用があるとされる黒ウーロン茶や薬もあって対策は可能だが、問題は的確な検査方法が実用化されていないこと。
北大が開発したのは、光の散乱を使って血液成分を測る技術で、採血をする必要がなく利用しやすいのが特徴。現在の精度は、採血に比べてやや劣るが、採血をせずに脂質を測ることができるのはこの技術しかない。心筋梗塞の患者にも効果的だという。心筋梗塞は薬で治療しても再発リスクが高く7割の人は再び血管が詰まってしまうリスクがある。
飯塚氏は、「動脈硬化の原因は、悪玉コレステロールと言われており薬を使って下げる治療をする。実際、空腹時の検査では悪玉コレステロールの数値は下がり脂質も正常という場合が多い。しかし、食後に高脂血症のような異常をきたしている人が再発することが分かってきた。こういった人たちを検査して再発リスクを抑えることも可能ではないか」と話す。
同社は、2018年には計測器を実用化させる意向。胸や腹、腕など皮膚のどこからでも測れる使いやすいものにする。「食事の摂取量と吸収量には個人差があって、この計測機では血中の濁りから吸収量の違いも分かってくる。そうなると個人の身体に応じたピンポイントの栄養指導もできるようになる」(飯永氏)
メタボ検診の結果で特定保健指導を受ける人は毎年約200万人とされている。そのうち最後までやり切る人は約70万人。食後高脂血症が効果的に測ることができるこの計測器は、こうした人たちの利用も想定される。