11~12年前からスイーツ王国推進協議会を立ち上げて札幌をスイーツの街にしようという運動をしている。北海道はスイーツの原材料の宝庫で、札幌はブランドイメージの良い都市。まさに北海道、札幌はスイーツ王国、菓子王国になれると思ったからだ。お菓子作りは農産物加工業とも言える。乳製品はもちろん、小麦、ビート、小豆などは北海道の生産が圧倒的に多い。
昨今は、インバウンドが増えてアジア地域の中でも「北海道の食べ物は美味しい」、「北海道のお菓子は美味しい」という評判が高く、北海道ブランドがどんどん確立されている。私はこれまで30数年間、札幌を中心に店舗を展開し、地域に根差したお菓子屋さんになりたいと思ってきた。たまたま私の息子が、私のそばで1年ほど働いた後、東京で自分で会社を興した。チョコレート菓子を作ってインターネットで売るとか、きのとやのバースデーケーキをインターネットで全国販売することを始めたが、ことごとく失敗した。 資本金も全部なくなってどうにもならなくなって、「チーズタルトはすごく美味しいと思う。あれを東京で売らせてくれないか」と頼みに来た。私は息子に東京での販売を認めた。息子は東京でいろいろお店を開く場所を探したが、どこも相手にしてくれない。ここと思っても最後に流れてしまう。
息子は、14年2月、JR新宿駅東口に2・6坪の小さい店舗を見つけた。前にここで商売をしていた人は1日3~5万円くらいしか売っていなかったというからどうにもならない場所だ。ルミネがその商業施設を運営していたが、1年契約をして「半年間だけ様子を見ましょう」と何とか入ることができたという。売れなかったから1年で退店してくださいという条件。内装費からすべてこちら持ちで出店した。
しかし、予想に反して最初から1日30万円~50万円も売れ、出店から2年半たった現在も70万円程度を売り上げている。2・6坪で2人しかいないのにそれだけ売る店になった。そうすると世の中は変わってくる。いろんなところから出店要請が来たそうだ。都内や近郊はもちろん全国からオファーが来て、いい場所をいい条件で選ぶことができるようになった。
息子が東京で会社を興したのは3年前で、14年2月に新宿東口でお店を出し、それが軌道に乗り、どんどん引き合いが来て全国にお店を増やしていった。海外からもオファーが来て、昨年8月には香港にお店を出した。そこでは3時間待ちの大行列ができている。アジアはもとより世界中からオファーが舞い込み、「自分に売らせてくれ」、「ここに出店してくれ」、「ここに商品を流してくれ」とどんどん広がっている。
「BAKE」ブランドのお店は現在30店。国内20店で海外は10店だが、台湾の高雄に最近2店目を出した。こちらも3時間待ちで何百人も並んでいる。10月17日にはシンガポールに2店目を出す。海外は今後1年間で50店舗くらいにしたい。
北海道は実に小さいマーケットで、首都圏はマーケットが全く違うと思った。海外に出たら海外マーケットは無限だということに気付いた。これからどこまで広げることができるか。ただ、いくつも懸念はある。そんなに世の中は甘くない。禍福は糾える縄の如し、いつ、まさかという坂があるかもしれない。ただ、私としてはもう走るしかない。今回、北海道代表に選んでいただいた訳ですから、次は日本代表を目指すとともに、世界に北海道を売っていきたい。(終わり)