日本経済新聞社と日本経済研究センターの主催による「景気討論会」が16日、札幌市中央区の札幌パークホテル3階「パークホール」で行われた。道内からは、北海道ガスの大槻博社長と北海道銀行の笹原晶博頭取が出席、それに三井住友銀行の西岡純子チーフエコノミスト、日本経済研究センターの佐々木仁主任研究員の4人が日本や北海道の景気動向や先行きに必要な政策などを話し合った。P1090157(写真は、札幌パークホテルで開催された景気討論会)

 本サイトでは、北ガス大槻社長と道銀笹原頭取の発言をピックアップ、お二人の景気体感と今後の成長に向けて必要な政策等についてのコメントを追ってみた。
 まず景気の現状認識について、大槻氏は「これが常態。経済が盛り上がる要素は殆どない。実質賃金は上がっておらず年金、医療など先行き不安も払拭されていない。モノからコトへの消費シフトもうまくいっていない。しばらくこのままいくのではないか」と述べた。
 
 笹原氏は、「消費に力強さを感じない。原因は4つある。まず可処分所得が上がっていないこと、次に将来不安が拭えずに節約志向が継続していること、3つ目は耐久消費財のストック調整が終わっていないこと、最後は逆資産効果が出ていること。金利は最低水準だが、金利だけでは(景気浮揚に)効かない。投資する必然性が必要だ」と訴えた。

 次に足下の北海道経済の現状について、大槻氏は、「今回の台風の影響で道路や橋、鉄道など物流の影響、農作物被害があった。国の支援などもあって回復は早いかもしれないが、農業では種イモの被害など来年以降も被害が続く可能性がある。ただ、インバウンドと食の北海道ブランドは強く、点から面に広げる投資を続ければしばらくは力強くいけるのではないか」と話した。

 笹原氏は、「景気の持ち直しは8月はやや鈍化したものの継続している。農業関連がしっかりと下支えしている」という認識を示した。そのうえで、北海道を含めて国内全体の再浮上の条件として「年間所得が500万円以上の中間層をいかに増やしていくか、可処分所得をどれだけ高くできるかにかかっている」とした。

 今後、必要になる政策として大槻氏は、「東京一極集中、札幌圏への一極集中をどう排していくか。一極集中を放置すると地方は死に体になり、東京も死に体になる。一極集中を排して日本全国に活気をもたらせば人の移動、経済の交流で多様な消費を生みGDPも上がっていく。人口問題も改善できる。社会の再構築の中で消費を生むことを考えていくべき」と断じた。
 
 笹原氏は、「ローカルアベノミクスの最大の焦点が攻めの農業の実現。北海道の果たす役割は大きい。しかし、海外の3倍もの値段で輸出しても現地では売れない。物産展のようなスポットで売れても日常的には売れない。輸出先のマーケットに応じた価格で生産できる技術開発と品種開発が必要だ。北海道はまさにそこに立ち向かっていかないといけない。その可能性はある。我々はその動きを支援したい」と語った。
 
 討論会を通じて注目発言が出たのは終盤。西岡氏の次の発言だった。「成長に勢いをつけるのは企業。経済の躍動感は企業がカネを使ってこそ生まれる。ベネフィット政策の効果が出ているのなら、一定程度、資金を貯め込んだ企業に(課税するなど)ペナルティ制度も機能し得るのではないか」と、痛みを伴う政策を前に進めていくことが必要だと主張した。


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