(写真は、木下勝寿社長=2016年4月21日札証個人投資家向け会社説明会にて)
自社開発した健康食品や化粧品のネット通販で独特のビジネスモデルを構築している東証1部上場の北の達人コーポレーション(本社・札幌市北区)。同社率いる木下勝寿社長(48)は、華やかなIT企業家とは一線を画す地道な起業家の顔を持つ。「EXILEやAKB48より私は北島三郎を目指したい」――ヒット曲に左右されない演歌の定番としての強さこそ経営にとりいれるべきエッセンスと強調する。
木下社長は、インターネットが普及し始めた20年ほど前からネット通販を始めた。ネット環境の進化は凄まじい。端末がパソコンからタブレット、スマホへと変化するたびに既存のビジネスモデルは劣勢になり、昨日の勝者は明日の敗者になる過酷な生き残りレースだ。
そんな中を生き抜いて東証1部に駆け上がった木下社長は、環境変化に対応する修正力と流行に左右されない安定力の感度を磨き上げてきた。もちろん始めたころは、自ら発案した“訳ありグルメ”など新奇なアイデアが受けて得意気になり、足元をすくわれた挫折体験もある。ネット界の浮き沈みを実体験したからこそ「修正力」と「安定力」がネット通販には最も必要と感じたのだろう。
同社の強みは、定期購入者が7割という岩盤顧客を掴んでいることだ。ブームに乗った一過性の良い商品では岩盤顧客は生まれない。鈍角でも成長を続ける演歌のような商品を揃えることが同社の戦略だ。急流のネット通販業界で流されないコツを見つけたからこそ同社の成長があるのだろう。北島三郎の演歌が聴きたくなった。