札幌証券取引所の次期理事長にJR北海道子会社の北海道キヨスク社長、小池善明さん(65)が浮上している。札証廃止派と存続派の中間を取った妥協のトップ人事でリーダー不在の経済界を象徴するような“こんにゃく問答”から生まれた展望なき選出劇である。
JR北海道常務などを務めた小池さんの経歴は申し分なく、米国で経営学を学び財務や企業会計に詳しく09年には札証の会員外理事に就任するなど札証活性化の当事者として欠かすことのできない人材。
しかし、札証理事長となると小池さんの出身母体がJR北海道ということを考えれば違和感は否めない。JR北海道は鉄道建設・運輸施設整備支援機構から経営安定基金の支出を受けており、来年度も新たに2200億円の基金積み増しを受けることになっている。
名古屋証券取引所社長や福岡証券取引所理事長にはそれぞれ中部電力、九州電力の副社長が就任しており、北海道電力が札証理事長を出さない歴史的経過を考えれば、準公的会社としてJR北海道に白羽の矢が立つのは自然な流れだ。
しかし、JR北海道は準公的会社であるとともに民営化後20年以上が経過しても独り立ちの展望すら見えない。ならば、子会社はどうかというと天下り先として存在するだけで、その中の1社でも株式公開を目指すような元気のある会社があっても良さそうなのに、上場を志向する会社は皆無といっても良い。
まさに公共事業依存、官に寄りかかる北海道経済を象徴するような札証トップ人事と言わざるを得ない。
伊藤義郎理事長の後任を巡って人選は難航続きだった。小池さんと同時期に会員外理事に就いたアークス社長の横山清さんは早くから理事長就任を固辞。後任人事の難航と軌を一にするように札証の存在意義そのものを問い直す動きも表面化してきた。
巷間言われているのは、存続消極派が北洋銀行、存続積極派が北海道銀行というように色分けされるまでになっている。
その綱引きの中で均衡を取るように生まれてきたのが小池さんだった。
札証理事長は、その是非はともかく札幌商工会議所の会頭が就任してきた。現理事長の伊藤さん(伊藤組土建元社長、現取締役名誉会長)が就任したのは1990年9月。当時、札商会頭だった今井道雄氏(元丸井今井社長)の後継だった。伊藤理事長は21年目に入っている。
慣例でいけば、高向巖札商会頭が就くところだが、高向さんは現在も北洋銀行の会長を務めており、金融商品取引法によって証券取引所の理事長には金融・証券業界からは出せない決まりになっているため札証理事長に就任することはできない。
札証は全国の証取の中で福岡と共に地方に残った証取であり、北海道にとってその存在意義は大きい。経済のインフラとして北海道経済が自立的に成長していくためにはなくてはならない機関だ。
理事長改選は5月の札証総会で行われる。流動的要素が残っているにしても次期理事長は小池さんに決まることになるだろう。小池さんの課題は、JRタワーを運営する札幌駅総合開発のようなJR北海道の子会社を1社でも2社でも難題を解きほぐして札証に上場させることに尽きる。札証最後の理事長と言われぬ実績を残して欲しい。